ボサノバ・・・ダイアン・クラール、アストラッド・ジルベルト、サリナ・ジョーンズ それぞれのクワイエット・ナイツ(4)(改)

CD  “Salena Sings Jobim With The Jobim’s”  の4 曲目にサリナ・ジョーンズクワイエット・ナイト オブ クワイエット・スターズがある。タイトルにあるように二人の名前(サリナとジョビン)がクレジットされている。ボサノバの第一人者であるジョビンの考えが色濃く反映されたCDになっている。録音もブラジルのリオデジャネイロでメンバーの人選も彼の取り巻きだ。ボサノバとしてはかなり本格的だと言える。但し、良い演奏かどうかはCDを聞いて見なければわからない。

ピアノとフルートのユニゾンで、10 小節のイントロが始まる。ピアノとフルートの音が、意外と綺麗にブレンドしている。そのユニゾンは少しタメていて、ゆったり聞こえる。タイミング的には、ドラムのアクセントの刻みより少し後ろにある。そのユニゾンより若干遅れてギターのカッティング。そして、ギターの後ろにベースがある。イントロが終わってサリナ・ジョーンズの唄が始まるが、その唄のタイミングはドラムの刻みとほぼ同じである。一番前に唄を置いている。

イントロとそれに続く唄の部分の、ドラムのアクセントパターンは :4分・4分・8分休符・付点4分:の 1小節パターンである。このパターンとそのバリエーション、少々のフィル・イン、そして4分の連続のフットハイハットで 90% を演奏している。イントロのギターのカッティングパターンは、:4分・4分・8分休符・付点4分・小節線・8分・8分・8分休符・8分・8分休符・付点4分:の 2 小節パターンとそのバリエーションになっている。唄が入ると :4分休符・4分・8分休符・4分・8分: の 1 小節パターンがほとんどである。ドラムのアクセントパターンとほぼ同じことをしているのだが、なぜかギターのカッティングがドラムより遅れている。

唄に対してのセカンドメロにあたるピアノのメロのタイミングは、サリナ・ジョーンズの唄に較べてかなり後ろだ。タメて弾いている。ダイアン・クラールの ”クワイアットナイト オブ クワイエットスターズ”でも、ダイアン・クラールの唄に較べて、彼女のピアノのセカンドラインはかなりタメて弾いている。ダイアン・クラールは、ボサノバの生みの親の一人であるアントニオ・カルロス・ジョビンのピアノをまねて、タメて弾いたと考えることが出来る。一方でサリナ・ジョーンズのCDでピアノを弾いているのは、ジョビンの孫であって、ジョビンがピアノを弾いている訳ではない。が、ジョビンの影響なのかかなりタメて弾いている。

このCD付属の解説に、サリナ・ジョーンズとジョビンが音楽上のことで少々もめたとある。ピッチについてではないであろう。サリナ・ジョーンズの唄のタイミングか、ピアノのタイミングか、ギターのタイミングについてだろう。あくまでも想像でしかない。ただしサリナ・ジョーンズの唄のタイミングは、アストラット・ジルベルト、ダイアン・クラールとほぼ同じである。

ボサノバのセカンドメロはタメて弾くのが普通なのか、それとも、ただの遅れピアノなのか、私の中で整理がついていないのが正直なところだ。しかしボサノバの生みの親は全部で3人居て、アントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトともう一人は詩人であると言われている。次回は、アントニオ・カルロス・ジョビンとジョアン・ジルベルトのボサノバの比較をアナライズして、このへんを少し整理したい。

ベースは、ボサノバとして普通にタメている。

サリナ・ジョーンズの唄は、ベンディングとビブラートが多くブラック系独特の唄い方だ。ダイアン・クラールの唄い方によく似ている。ビブラートも大きくゆったりしている。少しタメているが、曲想からしてこんなものだろう。声は太く、胸に響かせた発声になっている。長い間トレーニングを積んだ声で、ストレートがほぼ真っ直ぐ、それをビブラートで揺らしている。曲想からしてかなり力を抜いて唄っているが、体に響いていてしっかりした声になっている。ダイアン・クラールやアストラッド・ジルベルトの囁くような唄い方とはかなり違っている。

サリナ・ジョーンズの唄には、チャーリー・パーカーと同じものが乗っている。サンタナと同じものだ。ジャズ・ボーカルで言えば、ルイ・アームストロングナット・キング・コールトニー・ベネットと同じものだ。それが、ゆったりして少しシャープなボサノバのリズムに乗って、独特の美しい空間を作っている。

このCDの1曲目 ” I Was Just One More For You” と 9 曲目  “Girl From Ipanema”にジョビンの唄が入っているがサリナ・ジョーンズ、アストラッド・ジルベルト、ダイアン・クラールに較べると明らかに遅れている。2014/11/08

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