初期のサンタナ(1969年)と ギターヘブン(2010年)のサンタナ    どこが違うのか・違わないのか?(3)

例えば、テンポ240で16分音符の連続するフレーズを弾く場合、16分音符一個の長さは 1/16秒となる。この音が4つ連続したとして2つ目の音がコントロールにムラがありその音価の半分の長さ 1/32秒ずれたら16分音符4つのフレーズとして聞くには無理がある。しかしテンポ60で4分音符が4つ連続するフレーズで2つ目の音が 1/32秒ずれてもそれなりに4分音符4つ連続するフレーズとして聞こえる。この場合の4分音符の長さは 1秒で 1/32秒タイミングにムラがあっても大きなズレではないと感じるからだ。同じ 1/32秒でも、上の16分音符の場合は音符の半分の長さがズレてしまうので感覚的に許せないのである。4分音符の場合でも、2つ目の音が 1/32秒ズレている時と正確な時の違いを、人間の脳はなんとなく感じている。 1/32秒ズレている場合は、ルーズに不安定に感じる。なんとなく下手に聞こえるのである。どんな楽器でも、フレーズがルーズに聞こえる人に速弾き(速吹き)は出来ない。速弾きの目安は、テンポ 184で16分音符の連続を少し切れ目を入れて(レガートでなく)タイミングが遅れず綺麗に聞こえるように弾けるかだ。もちろん、もっと速いに越したことは無い。

結局、速く弾けない人は一個一個の発音のタイミングにブレがある。これは音価の長い音、例えば2分音符でも発音の瞬間はブレている訳だ。そして人間の脳は、これをなんとなく不安定にルーズに感じている。ということは、童謡など子供向けの曲でもちゃんとは弾けない。つまり速弾きが出来なければ弾ける曲など無いと言える。楽器が弾けないのと同じことなのだ。

サンタナに向上心があって、自分よりも腕のいいギタリストが何人も居ることを自覚していた。あれだけ有名になったギタリストは、なかなかこうは考えないものだが・・・。

速弾きを経て”ギターヘブン“のサンタナは、同じブルースのフレーズでも緻密な音のコントロールを手に入れた。初期に較べてなんとなく感じた不安定感やルーズな感じが見られなくなったのだ。技術的にもスティービー・レイボーンリー・リトナーと同じレベルになったと言える。(つづく)

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