音に何かを乗せる・・・美しい音とは

<音に何かを乗せる・・・美しい音とは>

音に何かを乗せるという考えがある。もっと気持ちを乗せろとか、心をこめるとか来るとか来ないとかよく言っている。これが無いと音が死んでいるとか、音が違うとか、情感に乏しいとか言う。この何かを表す言葉がまだない。それゆえに、人によって呼び方が異なる。何かが乗った状態の音は、そうでない時の音に比べ、雰囲気が大きく変わる。まるで別物だ。1個1個の音が美しく聞こえる。重要なのは、この良好な雰囲気はメロディ(音と音の前後関係)とか、音のコントロール(強弱、タイミング、長さ)から来るものではないことである。ただ1個の音だけで美しいのだ。この何かが乗っている音と、乗っていない音の違いをはっきりと認識できるようにならなければ真の意味での音楽はわからないだろう。

辻井伸行氏が2009年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにおいて優勝したとき、審査員の彼についてのコメントの中に「彼のピアノの音は美しい」というのがあった。ピアノの調律師にすれば、ハンマーの速さが同じならば、猫が踏んでも同じ音がするというはずである。私からみれば彼の音にはロックギターのサンタナと同じものが乗っている。サンタナのギターの音もとても美しい。音楽における音色の大部分は、音に何かが乗った美しい音に支配されることになる。

ジャズのマイルス・デイビスはメロディ(音の組み合わせ)や音のコントロールから来るものをテイスト、1個の音から来るものをサウンドと呼び、使い分けている。

この何かだが、嬉しくても、哀しくても、同じものが乗るのでフィーリングではない。乗せ方がいくつかあるのだが、乗せ方によって少し色が変わる。でも根っこは同じものと考えている。

この何かを乗せることが出来るミュージシャンを列記する。クラシックでは、ナルシソ・イエペス、五島龍、五島みどり、仲道郁代、安川かず子、清水かずえ,江藤俊哉、辻井のぶゆき、ブーニン、グレン・グールド、ホロヴィッツ、サラ・チャーン、ポップスでは、尾崎豊、キロロ、いきものがかり、YUI,あやか、コブクロ、ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、ブルースのスティーブ・レイボーン、ハロウィンのギター、サンタナ、ジャズではチャーリー・パーカー、オーネット・コールマン、マイルス・デイビス、ミンガス、ティル・ブレナー、マッコイ・タイナー、キース・ジャレット、ポール・デスモンド、ミシェル・ペトルチェアーニ、ビリー・ホリデイ、ロレツ・アレキサンドリア、ゲイリー・ピーコック。そして、琴音、都はるみ、ビセンテ・アミーゴ、エスタス・トーン。

この他、これ以外にもたくさんいるが、”何か”が薄くしか乗らない、もしくは全く乗らない人の方が、圧倒的に多いのだ。
この音に何かを乗せる事と、発音のタイミングが他のサウンドクリニックと大きく異なるところである。2014/04

音の先端(アタック)を合わせれば、2つの音が同時に聞こえるかという問題

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