<管楽器の奏法、発声法(ボイストレーニング)>
これは大きく分けると2つになる。いかに遠くへ音を飛ばそうという奏法と、そうでない奏法である。たとえば映画の役者さんと舞台役者さんの発声法の違いだ。舞台の場合、基本的にマイクが無いので、いかに遠くへ飛ばすかという発声法になるだろう。
管楽器の場合、クラシック、ジャズのビッグバンド、ブラスバンドは基本的に遠くへ飛ばす奏法になっている。ジャズのコンポはその2つの奏法と中間的な奏法が混在している。
クラシックやブラスバンドから楽器を始める人が多いからではと考えることができる。トランペットのマイルス・デイビスやティル・ブレナーは音を遠くへ飛ばすことよりも、ニュアンスの表現に重点を置いた奏法になっている。ティル・ブレナーのボーカルも語りかけるように唄っている。
意外に二人とも音は細くはなっていない。特にブレナーは、トランペットでフリューゲル・ホルンと聞き違える様な丸く太い音を出している。ボーカルも考え方は同じで、クラシック、合唱、ミュージカルなどマイクを使用しないものは、基本的に遠くへ飛ばす発声法である。
ジャズのビッグバンドをバックにしたジャズボーカルは、ビッグバンドと音の質感を揃えるためなのか遠くへ飛ばす発声法で、マイクを少し離して唄う人が多いようである。このタイプのジャズボーカリストが、トニー・ベネットで、対極にチェット・ベイカーが居て、その間を埋める人がたくさんいる。ジャズボーカルとしての発声法があるわけではない。
ロック、R&B、ポップスにおいては何でもありだ。これでなければいけないという発声法が確立しているわけではない。
野外なのか、屋内なのかでも違って来るが、自分が何メートル離れた相手に声(音)を届けようとしているのかで、自然に決まって来る。
あなたが声を届けようとしている相手との距離は、 50cmなのか、それとも 30mなのか?
管楽器でも、ボーカルでも、マイクを使用する場合は、当然声を届けようとしている相手との距離は短くなる。マイクを使っても、自分の音(声)のイメージは遠くへ飛ばす奏法の音なんだという人もいるだろう。その場合は、それで良いと思う。ただ映画の世界に舞台の発声を持ち込むことになるから、監督に嫌われるかも知れない。