どのジャンルの音楽についても言えることだが、誰の演奏を基準にするかという問題がある。これはそのジャンルにおいてテクニックが特に優れていると言われており、音楽的にも高い評価の演奏者にする。たとえばクラシックで言えば、指揮は、カラヤン、ピアノはポリーニ、ジャズでは、SAXはパーカー、ピアノはキース、ドラムはパディ・リッチ。
そしてブルースの場合はスティービー・レイボーン。レイボーンの唄と、ギターソロ(メロディ)の部分は、ポリーニ、パーカー、とほぼ同じタイミング(基準のタイミング)で唄い、演奏されている。そしてその「基準のタイミング」より少し後にリズムギターのタイミングがある。ギターのコード弾きの所は、ソロに比べて遅らせて弾いている。
Stevie Ray Vaughanの「 Couldn’t Stand the Weather 」の1 曲目、イントロのリフの部分は私の言う「基準のタイミング」で弾いている。かなりシャープに弾いており、このタイミングで弾いている日本のプロのブルースギターが何人いるか?である。リフの合間に弾かれているリズムギターはソロに比べて少しタメて弾いている。ドラムのスネアも少しタメている。キックはスネアより前だ。ベースはリズムギターほどではないが少し後ろだ。レイボーンのアドリブソロは基準のタイミングで演奏されている。
同じアルバムの2 曲目、ギターのルバート演奏の後に、ギターとベースのユニゾンのリフ、リフは全体に少しタメて演奏されているが、ギターとベースのユニゾンではベースが少し遅れている。ブルースのベースはこれが普通なのだろう。続いてギターのコード弾きのリフが入る。これは「基準のタイミング」で弾いている。ギターとベースのユニゾンのリフより前である。続いて、レイボーンのボーカルが入るが、全然タメてはいない。唄の終わりにバックのキメがあるが、キメはそれまでよりも少し前に演奏されている。その後のギターのアドリブソロはかなりシャープで基準のタイミングで演奏されている。ベースはユニゾンでもキメでも少し後に弾いている。この曲の場合、普通のブルースと違って、スネアドラムは、ほとんどタメていない。
同じく 3 曲目、スローブルースだが、スネアはブルース特有のタメがある。
キックはスネアより前にある。ギターのコード弾きはスネアと基本的に同じでタメている。
唄と唄の切れ目の所のギターのカウンターラインはタメないで(唄と同じタイミングで)弾いている。つまり、唄っている時のギターのコード弾きはタメて、カウンターラインはそれよりも前に、弾き分けているということだ。
すべてのジャンルの音楽で言える事であるが、テンポが遅くなるとタイミングを遅らせて演奏することが多いようである。ファンク、ヒップホップ、R&B、ブラコンについても、ブルースと同じと考えてよいであろう。2014/07