マッコイ・タイナー風ソロピアノ “SOMEONE TO WATCH OVER ME”(改)

“SOMEONE TO WATCH OVER ME” アナライズする。(スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)

この曲はCD 「REVELATIONS」の 9 曲目にある。ここにある譜面は、このCDのイントロとテーマだけである。完全コピーではないがハーモニー的には 90% はCDのコピーそのままである。違う所は、A パート 2 小節 4 拍、3 小節 1 拍、 5 小節 4 拍のみ。 B パート 右手の CD と違う所は、 2 小節 3 ~ 4 拍、 3 小節 1 拍、 2 ~ 4 小節の内声、 4 小節 1 拍の内声、 5 小節 1 ~ 2 拍の内声、そして 4 拍。内声を少なくしている。CD の左手の 10 度のスパンは、 7 度に変更している。 C パートメロディの譜割りはこの CD とかなり違って、チェット・ベーカーの唄う「SOMEONE TO WATCH OVER ME」 に近づけている。 C パートのハーモニーはほとんど同じで、違う所は、5 小節 3 ~ 4 拍、7 小節 1 ~2 拍、 8 小節 1 ~ 2 拍である。 D パート CDと違う所は、2 小節 3 ~ 4 拍、 3 ~ 4 小節は、 CD よりも内声を薄くしてある。 6 小節 3 拍は少し違う。  D パート ハーモニー的には、 1 ~ 7 小節は CD と同じである。  8 小節は作ってある。 全体にマッコイ・タイナーのソロピアノの雰囲気は残してある。

 

 

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イントロは1 小節のみ。イントロの 1 ~ 2 拍は、 Eb 音があるので Bb7sus4 になる。スケールは、Bbミクソリディアンだ。3 拍、右手は、Eトライアドになっており、 4 拍目もE のアルペジオで、3 ~4 拍のコードは、 E / Bb7 となる。スケールは、Bbアルタードまたは、Bbコンデミである。右手と左手、対位法的には斜行になっている。

<パートA >ここからテーマになる。1 小節は Eb6。2 ~4 拍の表拍は、完全4 度の平行移動になっていて浮遊感を創っている。スケールは、左手最後のAナチュラル以外は、Ebイオニアンでできている。左手 4 拍の Aナチュラルは、次の小節頭の左手のAbに、半音下降でアプローチしている。これは、ジャズベースにおいては普通にあることで、Aナチュラルは Ebイオニアンのノンスケールトーンであるが、4 拍は弱拍である為に不自然さは無い。2 小節、1 ~2 拍は、Ab6。スケールは Ebイオニアン。3 ~4 拍は、Abdim7。Abdim7 は Bb7 の代理コードで、次の Eb へドミナントモーションしている。4 拍目は音源と違っている。右手と左手のラインは、反行している。

3 小節。1拍は音源と違う。分厚く音を重ねるのは私の好みではないので、こうなっている。2 拍の左手も音源と少し違う。3 拍はFmのコードトーン。4 拍は、表、裏合わせると Fトライアドになっている。表拍の F 音は、 Fナチュラルである。この F 音は、F#dim のコードトーンの半音下の音で、ここのトーナリティーである Ebイオニオンのスケール音なので、テンションとして使える。A音、C音は、F#dimのコードトーンである。そして、F#dimは、D7の代理コードで、次のGm7へドミナントモーションしている。全体のラインは、少々、反行している。

4 小節。1 拍は、Gm7。音源とは違って左手を少し変えている。2 拍の Dbdim7 の表拍は、コードトーン。裏拍の下から、C, Eb は、3 小節の F#dim と同じ理由でテンションになる。 3 拍右手の Eb, F# は、C7 の #9 , #11 のテンションである。そして4 拍の E, G へ半音で平行移動している。2 拍目の Dbdim7 は、C7の代理コードなので、2 ~4 拍は、C7 となる。1 拍目の Gm7と Ⅱ- Ⅴを作っていて、次の Fm7 で Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ となる。ただし、 3 ~ 4 拍は、 C7 と表記しているが、実際には 7th の音は、ボイシングに使われていない。トライトーンが出来るのを避けている。トーナリティを弱めていると言える。しかし、この 3 ~ 4 拍は、 C コンデミでボイシングされており、C7 と表記せざるをえない。3 拍目の Eb , F#(Gb)は、FM7 のサウンドにFm7のマイナーの部分が混入してきたと考えられる。4 拍目は、 FM7 のスケール( F イオニアン又は  F リディアン)になっている。音楽は、古くからメジャーとマイナーの混合で出来ているものだ。全体のラインは、反行している。 7th コードのドミナント感を弱めて浮遊感を出すには、ボイシングに 7th を使わない。または、 sus4 にして 3 度を使わない。そしてディミニッシュに置き換える。この三つである。

5 小節。1 ~ 2拍右手は、完全 4 度の 2 音を動かしている。スケールは、Ebイオニアン。3 拍は、B7 でBミクソリディアン。 4 拍は、ピアノの黒鍵のみである。ここは音源と少し違っている。ピアノの黒鍵は同じだが、マッコイは、ここをグリッサンドでやっていて、部分的に両手を使っている。1 ~ 2 拍の Fm7 は、次の小節(6 小節)の Bb7sus4 と Ⅱ- Ⅴを作っている。sus4 なので厳密な意味での Ⅱ- Ⅴ ではない。 3 ~4 拍の B7 は、次の小節の Bb7sus4 にドミナントモーションしている。本来ならばこの 6 小節の Bb7susu4 は、Bb7 のはずだが、 sus4 にすることにより、ドミナント色を薄め、浮遊感を出している。 sus4 は、トライトーンを持たない。

6 小節。Eb があるのでここは、 Bb7sus4 となる。ここは、2 / 4 になっているが、ルバートなので、こうなってしまった。インテンポならば、 5 小節 Fm7 全部。 6 小節 1 ~ 2 拍 B7 , 3 ~ 4 拍 Bb7sus4 となる。

 7 小節。 1 ~ 2 拍は、 Db7 。 スケールは、 Dbリディアン7thスケール。 3 ~ 4 拍は、 C7 。 3 拍から 4 拍表拍まで Cコンデミ。 4 拍裏の Ab 音は、4 拍表拍の A音と次の小節 1 拍の G音を半音で繋いでいる。1 ~2 拍の Db7は、次の C7 へ半音下降のドミナントモーション。 C7 は、次の小節のF7へ完全 5 度下降のドミナントモーション。Db7 は、本来は G7 で、その裏コードにあたる。裏コードとは、そこにマイナーを混入したということになる。また、G7 をGアルタード、または、Gコンデミで考えてアレンジしても、メジャーとマイナーの混合になる。Db7 をG7 と考えれば、トニック Ebからみれば、Ⅲ augM7 となり、6 小節の Bb7sus4 から考えると、偽終止となるが、Bb7 が sus4 の為、ドミナントモーション感は少ない。

8 小節。F7 は、Fリディアン7thスケール。Bb7sus4 は、Bbミクソリディアン。E / Bb7  は、Bbアルタードまたは、Bbコンデミとなる。7 小節のDb7 は、偽終止となり、 7 小節、Db7, C7。 8 小節、F7、Bb7sus4 , E / Bb7 は、sus4 があるので完全ではないが、全部ドミナントモーションの連続となって、2 コーラス頭の Eb へ繋がる。sus4 であってもドミナントコードであって、5 度下降の動き(モーション)なので、ドミナントモーションではある。

 

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<パートB> 1 小節、 1 拍、音源ではもう少し音が多い。 3 拍の Bb7 は、 4 拍の A7 へドミナントモーション。 4 拍の A7 は、次の小節頭の Ab へドミナントモーションしている。ただし、 Bb7 も A7 も 3 度がなく、ドミナント感は薄い。

 2 小節は、<パートA> の 2 小節と基本的に同じだ。

 3 小節。 1 ~ 2 拍は、本来ここは Eb だが、ここでは Eb の代理コードである Gm7 でボイシングされている。 3 拍は、 Fm7 のコードトーン。 4 拍は、すべて F#dim7 のコードトーンでボイシングされている。この小節は、音源のマッコイとかなり違っている。

 4 小節。 1 ~ 2 拍、 Gm7 だが、音源と違って左手はアルペジオにしている。 3 拍は、 Db。Eb / Db の Dbリディアンスケールになっている。 4 拍も Cリディアンになっている。本来ならこの 4 小節目のコードは、 Gm7, Db7 , C7 である。Gm7, C7 でⅡ-Ⅴ を作り、Db7 は、 C7 にドミナントモーション。 C7 は、次の小節の Fm7 にドミナントモーションのはずである。それをあえて Db7 を Db,   C7 を C にすることで、トライトーンの発生をなくし、ドミナントモーションではなく、ただの 「モーション オブ 5th 」にして、機能和声を弱め、浮遊感を演出している。繰り返すが、7thコードのドミナントモーション感を弱めるには、3 つの方法があって、 3 度をオミットして sus4 にする方法と、 7 度をオミットしてトライアドにする方法、ディミニッシュに置き換える方法だ。 7th sus4 は、 7th コードなので、ドミナントモーション。トライアドは、 7th コードではないのでドミナントモーションには ならない。

5 小節。1 ~2 拍は、 Fm7 。スケールは、 Ebイオニアン(Fドリアン)。 3拍、B7 のコードトーンでボイシングしている。4 拍は、ピアノの黒鍵のグリスサンドだ。 5 拍は、 Eb音があるので、 Bb7sus4 である。和声の構造としては、<パートA>の 5 ~ 6 小節と同じだ。 

 6 小節。 1 ~ 2 拍は、 Ebイオニアンスケールで出来ている。 3 拍は、 Bbm7 で Bbドリアン。 4 拍は、 Eb7(b9) でスケールは、 Ebコンデミになっている。 3 ~ 4 拍は、次の小節の Ab に行くための Ⅱ-Ⅴである。

 

 

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<パート C>。 1 小節、ここからインテンポだ。8 分音符は跳ねている。コードは Ab。スケールは Abリディアンだ。

 2 小節。 F#dim7 は、 Ab7 の代理コード。次の小節の Db7にドミナントモーションしている。左手は、下から F#, A の短 3 度が、半音で上に平行移動する。右手は、 C, F の完全 4 度が、全音で下に平行移動する。右手 1 拍目裏の Bb は、通常の理論には合っていない。右手も左手も平行移動の連続のせいか、まったく違和感はない。一般的ではないが、あえて理論付けするならば、エリントン・ボイシングの中にこういうのがある。理論的な音の半音ずれた音を 1 個だけ混ぜるというやつである。この場合、弾いてみて感覚的に違和感が無いと言うのが大事である。一般的な理論と、自分の感性がぶつかった場合、どうするのかというのは大事なことである。デューク・エリントンは、自分独自のハーモニーボイシングを確立している。理論が先にあってその後に音楽が生まれた訳ではない。音楽が先にあって、それを正当化する為に理論は生まれる。

 3 小節。 1 ~ 2 拍は、 Abm7。右手は、 Bbmのトライアド。スケールは、 Abドリアン。 3 ~ 4 拍は、 Db7 で右手は、 Bトライアド。スケールは Dbミクソリディアン。

 <パート C>は 70%が私の創作である。マッコイの音源とボイシングは当然、メロディもかなり違っていて、ほとんど別物である。でもマッコイらしさは十分にあるアレンジだ。

4 小節。 1 ~ 2 拍は、 Bb7。 1拍目は、 Bb7 のコードトーンでボイシング。 2 拍目は、 Bbコンデミでボイシング。 3 ~ 4 拍、コードは、 Eb6。右手は、 Cm のトライアド。スケールは、 Ebイオニアンである。

5 小節。 1 ~2 拍、 Am7(b5)。右手 1 拍裏に  Fトライアド。 2 拍、 Cmトライアド。スケールは、 Aロクリアン、または Aロクリアン#2。 3 ~ 4 拍は、 D7 で右手 3 拍目は、Bbトライアド。 4 拍右手 Fトライアド。スケールは、 3 拍、 Dアルタード。 4 拍、 Dコンデミ。この 3 ~ 4 拍の D7 は、 7 小節の G7 へドミナントモーションする。 6 小節のEbへ半音上行のドミナントモーションも考えられる(Eb=Gm)が、ここは、 5 小節のD7 も 6 小節の D7 も、 7 小節の G7 へドミナントモーションすると考える。

 6 小節。 よく見ると 2 ~ 3 拍は、 5 小節とほぼ同じ。全体的にも、ハーモニーの基本構造は、同じである。 Am7(b5)=Cm6。 Eb6=Cm7。となって、Am7(b5) と Eb6 は、ほぼ同じである。 5 小節、 6 小節は、基本構造が同じものが連続していると言える。 6 小節 1 ~2 拍のスケールは、 Ebイオニアン。 3 拍は、 Dアルタード。 4 拍は、 Eトライアドなので、 Dリディアン7th スケールだ。

 7 小節。1 ~ 2 拍は、 G7でミクソリディアン。 3 ~ 4 拍は、C7 でミクソリディアン。 G7 は、 C7 へドミナントモーション。 C7 は、次の小節の Fm7へドミナントモーション。

8 小節。 1 ~ 2 拍は、 Fm7 で Fドリアン。3 ~ 4 拍は、 Bb7 で Bbコンデミ。 Fm7 と Bb7 でⅡ-Ⅴになっている。

 

 

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<パート D> ここからルバートに戻る。 1 小節は、Eb イオニアン。 3 ~ 4 拍は、右、左ユニゾン。 2 小節 。1 拍、右手は Fsus4。 3 ~ 4 拍、 Abdim7でそのコードトーンでボイシング。この 2 小節目は音源と少し違っている。

3 小節。 1 ~ 2 拍は、  Gm7。 Gフィリジアンスケール。ただし、 Ab 音は、ボイシングに使われていない。 3 拍は、 Fm7。ドリアン。 4 拍は、 F#dim7。ボイシングはコードトーンのみ。ここも音源と少し違っている。 F#dim7 は、D7 の代理コードで、 4 小節の Gm7 へドミナントモーションしている。

 4 小節。1 ~ 2 拍の Gm7 は、 Gフィリジアンスケール。 この Gm7 は、 4 拍の C7 とⅡ-Ⅴになっている。 3 拍、 Eb / Db で、 Dリディアン。 4 拍は、 Dbm / C7 で、 Cアルタードスケール。 C7 は、次の小節の Fm7へドミナントモーション。

5 小節は、 Fm7。 F ドリアンになっている。このFm7 は、次の 6 小節 4 拍の Bb7 とⅡ-Ⅴになっている。

 6 小節。 1~2 拍、右手は、 Ebdimのトライアド。スケールは、 F# があるので Bコンデミ。 3 拍は、ピアノ黒鍵グリッサンド。 4 拍、 Bb7 は、 Bbミクソリディアン。 B7 は、 Bb7 へ半音下降のドミナントモーション。 Bb7 は、次の小節の Eb へドミナントモーション。この Bb7 を音源では、 Eb のハーモニックマイナーでボイシングしている。この譜面とは違っている。

 7 ~ 8 小節は、 100% 音源と違っている。私の創作で強引に終わっている。(完)

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