メジャーとマイナーの混合 LAURA ハーモニックメジャー トーナルセンター(1)

「LAURA」のテーマの、メロディとからめたハーモニーのアナライズをしていく。

 「LAURA」は、1944年公開の映画「ローラ殺人事件」のテーマ曲である。作曲はデイヴィッド・ラクシン。CD ” チャーリー・パーカー ウイズストリングスの 9 曲目にも入っている。

今から  72 年以上前に書かれた、大変古いスタンダードナンバーということになる。

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  前半 1 段目 1 ~ 4 小節すべて調性は G メジャーである。構造的には  G を Ⅰ とする Ⅱm7 – Ⅴ7 – Ⅰになっている。 1 小節 Am7 のスケールは A ドリアン( Gイオニアン)。ここはメロディが省略されているが、 B 音 2 分が 2 個。この B 音は調性であるG メジャーから見ると、 G 音から長 3 度の音で、メジャーであることを示す大事な音である。この 1 小節の調性は、明確に G メジャーである。 2 小節、コードは D7(b9)。調性である Gメジャーから見るとここのメロディは、 Gイオニアン+ A# 音(ブルーノート)で出来ているように見える。この 2 小節目のコードが D7 ならば、それで OK である。問題は、(b9)がついていることである。 D の b9 の音は、 Eb 音である。この Eb 音は、調性である Gメジャーから見ると b6 となり、ブルーノートではない。これをどう考えるのか?調性である G メジャーの G 音から 短 6 度となる Eb 音は、 Gナチュラルマイナーまたは、G ハーモニックマイナーの 6 番目の音である。ここの調性である G メジャーに、 Gマイナーの 6 番目の音が混入してきたと考えられるのである。メジャーにマイナーが混入したり、マイナーにメジャーが混入するのはかなり古くから行われている。そう考えれば、 A# 音(ブルーノート)も、b3 であり、これもマイナーの3 番目の音である。マイナーの音が混入したと考えられる。それでは、マイナーから 2 音が混入したこの2 小節目、D7(b9) のメロディをからめたスケールはどう考えるのか?色々と考えた結果、 Gハーモニックメジャー+ b3 (ブルーノート)となった。スケールを D から考えると、 D ハーモニックメジャー パーフェクト 5th ビロー+ G ブルースのブルーノート(b3)となる。 Gハーモニックメジャースケールとは、下から G, A,  B, C, D  Eb, F# の音列である。前半メジャー、後半ハーモニックマイナーのスケールである。これは、メジャースケールの 6 番目の音が半音下がったスケールでもある。メジャースケールの 6 番目の音がマイナースケールの 6 番目の音と差し替えられたスケール。つまりメジャーにマイナーが混入したスケールと言える。 7th コードに(b9) がついて次のコードがメジャーコードの場合、使用されることが多い。
 
ナチュラルマイナーの基本的な 3 コードは、Ⅰm , Ⅳm、Ⅴm である。ドミナントコードであるⅤmをⅤにすべく生まれたのがハーモニックマイナースケールと言われている。しかしこのⅤは、メジャースケールの基本 3 コード、Ⅰ、Ⅳ、ⅤのドミナントコードであるⅤであり、ハーモニックマイナースケールは、メジャースケールのドミナントコードⅤをマイナースケールに混入したと言える。ナチュラルマイナースケールの 7 番目の音をメジャースケールの 7 番目の音に差し替えたのが、ハーモニックマイナースケールなのだ。そして、 6 番目の音もメジャーの 6 番目の音と差し替えたのが、メロディックマイナースケールである。ハーモニックマイナーよりも、メロディックマイナーの方が、メジャーの混入度が高いと言える。このようにメジャーとマイナーの混合は古くからある。クロマティズムもメジャーとマイナーの混合とも言える。
 
そして、これらの事は古代の民族音楽システム、トーナルセンターシステムが、時々顔を出すと考えると理解し易い。これは、メジャー、マイナーのシステムが生まれる前の音楽なので、漠然とした調性(Cメジャーとか Cマイナーではなく、ただの C。センター C。)の中に、現代の人間が聞けばメジャー、マイナーが混じったメロディが多数あるということだ。無論古代人には、メジャーとかマイナーの意識は無い。意識が無いからメジャーで唄い始めたメロディに、マイナーの音が平気で混ざってくるのだ。このいにしえの記憶が時々顔をだすのである。
 
メジャーとマイナーが混じったメロディと言えば、ブルース。ブルースはバークリー理論でもほとんど説明されていない。説明を避けていると言ってもよい。しかし、トーナルセンターからの視点で眺めれば、ブルースはコード進行のあるトーナルセンターと見ることが出来る。なぜなら、例えば Cブルースの C7 のコードで使えるスケールは、 C イオニアン、 C リディアン、 Cミクソリディアン、 Cコンデミ、Cアルタード、 Cドリアン、 Cフィリジアン、 Cエオリアン、Cロクリアン、 Cホールトーン、 Cハーモニックマイナー、 Cメロディックマイナー、Fハーモニックマイナー、 Cハーモニックメジャー、 Cリディアン7th 、 Cコンビネーションオーギュメント、半音階。これは、 Cのトーナルセンターと同じことである。マイルス・デイビスがやっているトーナルセンターシステムの曲にはコードがついているものが多い。そこでやっているのはマイルス・デイビスにとっては、ブルースに過ぎない。
 
しかし、ブルーススケールといわれているものは、10 音が多い( 6~ 10音)。トーナルセンターにおいては、 12 音全部使えると言っても、人は均等に 12 音使う訳ではなく、偏りが出てくる。使用頻度の少ない音と、使用頻度の多い音が出てくるのだ。最終的には全然出番の無い音が2つ位あって、 10音スケールになる。これがブルースだ。
 
人間は偏るものだ。人類が初めて唄というものに出会った時、まず、一個の一定のピッチの音を発声して、そしてもう 1 個の別のピッチの音を発声して元の音に戻ってくる。最初は 2 ~ 3 個の音から始まり、時間と共に、それが、やがてペンタトニック( 5 音であれば何の音でもよい)になる。多分こんな感じだ。この場合も、終止する音以外は、何の音でもいいのである。まだコードは無い。メジャーもマイナーも無い。これもトーナルセンターシステムである。現代の音楽は、トーナルセンターシステムを出発点として、それに、スケール、機能和声などの二次的なルールを加えて出来上がった為、ときどき、スケール(モード)、機能和声などに反する、母体であるトーナルセンターシステムが顔を出す。これが。メジャーとマイナーの混合となってでてくるのだ。トーナルセンターシステムについては、詳しくは別項のオーネットコールマンの記事を読むべし。
 
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 2 段目、調性は F メジャー。構造的には、ハーモニーもメロディも一段目を長 2 度下げているだけ。平行移動している。アナライズは 1 段目と同じ。
 
 3 段目、調性は Eb メジャー。構造的には、 1 段目を長 3 度下げて、 Eb をⅠとする。 Ⅱm7
-Ⅴ7-Ⅰ となっている。 4 小節目の Cm7 は、Ⅰ(Eb) の代理である。メロディは省略してあるが、すべて、 Eb イオニアンのスケール音で出来ている。 2 小節、 1 ~ 2 拍の Bb7sus は、2 拍目に 4 分 Eb音がメロディで、それに対応したものだが、 2 小節は、1 ~ 4 拍すべて Bb7でも違和感がないはずだ。
 
 4 段目、調性は Gメジャーである。基本構造は 1 段目とだいたい同じであるが、他の部分で違いが見られる。 
 
  1~ 2拍、メロディは Eb 音で、コードは Am7(b5)。このAm7(b5)は、通常は Aロクリアン( G エオリアン)。このスケールは、 G から見ると、 Gm7 に使用されるスケールだ。この他に、 Aロクリアン#2 も可能である。これは、 Cメロディックマイナーの上行と、スケール音は同じだ。 Cmと同じということで、 G から見ると Am7(b5)は、サブドミナントマイナーの代理コードとなる。このスケールは、 G をルートとすると、 Gエオリアン #3、 3 度の音がルートから長 3 度となり、ただの Gエオリアンに比べるとメジャー感がかなり強い。前半メジャー、後半ナチュラルマイナーのスケールになっている。ルートから上に、 G, A, B, C,D, Eb ,F音である。
前半メジャー、後半ハーモニックマイナーのスケールを、ハーモニックメジャーと呼ぶのであれば、これはナチュラルメジャーと呼んでもよい。まとめると、この Am7(b5) のスケールは、 Gエオリアン( Aロクリアン)、Gナチュラルメジャー(Aロクリアン#2)、 Gハーモニックメジャーの三つのスケールが可能である。 Gエオリアンであれば、完全マイナー。 Gナチュラルメジャーであれば、半分マイナー。 G ハーモニックメジャーであれば、少々マイナーとなる。
 
 3 ~ 4 拍のメロディは、Ab音で、コードは D7(b9)。メロディとからめてこの D7(b9)のスケールを考えると、通常は Dアルタード、 Dコンデミがすぐにでてくる。 Dハーモニックマイナーパーフェクト5thビローはここでのハーモニーにマッチしない。メロディの Ab音をスケールに持っていないからだ。Dアルタードは、 D7(b9)の 5 度(Aナチュラル音)とぶつかる Ab音をもっているが、通常 7 thコードのコードボイシングは、 5 度オミットすることが多い。オミットすることでぶつかるのを避けている。
 
Ⅴ7-ⅠのⅤ7に、アルタードまたは、コンデミが使用できるのは、広く知られている。しかし、なぜ使用できるかの説明に出会ったことがない。Ⅴ7のコードトーンをすべて持っているスケールだからよいのだろうか?しかし、例えば DミクソリディアンとDアルタードは、弾いてみた感じも、スケール音を眺めても、全然別のスケールである。似ても似つかないスケールだ。Dミクソリディアンが使える場所でなぜDアルタードが使えるのか?
 
バークリー理論では、Ⅴ7において b9、ナチュラル9、#9、#11、b13、ナチュラル13 が使えるとなっている。其のテンションを集めれば、アルタードスケールになるとしても、なぜそのテンションがⅤ7で使えるのかの説明がないのだ。Ⅴ7の b9、#11のテンションは、Ⅰにおいては、b13、b9 になり、10音のブルーススケールにない音である。ブルースでも説明できない。
 
それの対する私なりの答えは、スタンダードの曲でもⅤ7の場所は、トーナルセンターが可能な場所だと考えている。Ⅴ7はトーナルセンターと考えることだ。エニースケールOKなのだ。アルタードとコンデミがメジャーキーで使えるのは、トーナルセンターだからだ。アルタードに比べてコンデミの方がメジャー系の音がやや多い。アルタードよりコンデミの方が調性的にややメジャー寄りになる。
 
ここの Ab 音を絡めた D7(b9)で、この他に想定出来るスケールは、 GフィリジアンとGロクリアンである。D7(b9)は、次にGmを想定させるコードで、GmでAb音を持っているスケールは、GフィリジアンとGロクリアンになる。
 
ここでのスケールは、アドリブ時において、調性がGメジャーの時のD7(b9)で、何のスケールが使えるのか?ということではない。調性が、Gメジャー、メロディがAb音、コードがD7(b9)において、ハーモニー(=スケール)は、何が想定されるのか?についてのスケール(ハーモニー)である。
 
メロディがAbで変わらない、そして、コードがD7(b9)で変わらないのに、スケールが変わることで何が変わるのだろうか?。コードが同じD7(b9)でも、DアルタードとGフィリジアンでは、ボイシングに使用される音が、かなり違ってくる。サウンドが全然違ってくるのだ。メロディとコードが同じでもバックグラウンドの音は全然違ってくる。スケールの設定の仕方でまるっきり違った音楽になってしまうと言うことだ。
 
メジャーとマイナーの混合と言う視点から眺めれば、GフィリジアンとGロクリアンは完全マイナーであり、メジャー感は無い。しかし、ナチュラルマイナー(エオリアン)に近いのは、Gフィリジアンの方である。
 
2小節、1~ 2 拍は、1小節3~4 拍と同じ。 2 小節 3 ~ 4 拍、コードは、D7 で、メロディは、Aナチュラル音。作曲者が、ここでどのようなハーモニー(スケール)を想定したのか?。これだけの情報ではそれはわからないが、ここでは、Dミクソリディアン、Dコンデミ、Gハーモニックマイナー、Gメロディックマイナー、Gハーモニックメジャー の 5 つが想定可能である。スケールの設定の仕方で、全然違った音楽になってしまう。
 
 3 小節は、Gイオニアン。
 
4小節、メロディは、E, C , D音で、コードは、E7+。想定されるスケールは、Aメロディックマイナー、Aハーモニックマイナー、Cハーモニックメジャー、Cナチュラルメジャー、Eホールトーン、Eアルタードの 6 つだ。
 
この 4 小節目を大きく見て、調性をGメジャーとすると、マイナーの音が一つ混じったスケールは、Aメロディックマイナー。2つは、Aハーモニックマイナー、Cハーモニックメジャー、 Eホールトーン。 3 つは、Cナチュラルメジャー、 Eアルタードとなる。数が多いほど、マイナー度が高いと言える。
 
 
 
 
 

 

 

 

 

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