ヘキサトニックで考える (1)

ヘキサトニックと言っても色々ある(12音平均律で考える)。例えば、12音の中から適当に6音を拾い出し、それをヘキサトニックとするもの。あるいは、2つのトライアドのコンビネーション(組み合わせ)によって出来る 6 音をヘキサトニックとするもの。また、 7 音スケール(セプタトニック)の 1 音をオミット、 8 音スケール(オクタトニック)の 2 音オミットにより出来る 6 音をヘキサトニックとするもの。あるいは、ペンタトニック+ 1 音によって出来る 6 音をヘキサトニックとするもの。あるいは、 4 音コード+ 2 音によって出来る 6 音をヘキサトニックとするもの。また、民謡などにより古代から伝えられている 6 音スケール等、考え方は様々である。

今回は、この中からペンタトニック+ 1 音によって出来るヘキサトニックを、どんな時にどのように使用するのかを考えていく。

(尚、 Cホールトーンスケールは、 C+と D+のトライアドのコンビネーションによって出来ているヘキサトニックだ。Cオーギュメントスケールは、C+と Eb+のトライアドのコンビネーションによって出来ているヘキサトニックである。また、この考え方からすると、もう一つヘキサトニックが存在する。それは、 C+と Db+のトライアドのコンビネーションによって出来るヘキサトニックである。下から C 、Db、E、F、Ab、A 、のスケールである。そして、トライアドはオーギュメントでなくても良いわけで、そう考えるとヘキサトニックはもっと広がる。例えば、C と Ebm のコンビネーションなどである。)

ペンタトニックにも色々あるが、今回は普通のいわゆるマイナーペンタトニックで考える。ペンタトニックの特徴の一つは浮遊感があるということ。もう一つは半音が無い。そして浮遊感に繋がるトライトーンが無い。例えば、Dマイナーペンタトニックは下から、A 、D 、G 、C 、F と完全 4 度のインターバルスケールを1 オクターブ以内に並べ直したものである。簡単に言うと、ペンタトニックでフレージングすれば、それは、完全 4度のフレージングと同じということだ。

パーシケッティの  ” 20世紀の和声法 ” にこんなことが書いてある。「完全 4 度構成の和音はすべて等音程和音と同様にどの和声音も根音として働き得るのであいまいになる」 たて(和音)とよこ(メロディ)は同じなので、これはフレーズにも言えるということだ。

音楽、特にメロディというのは、浮遊(アウトサイド、主音から離れる)感を楽しむものである。どんなメロディも主音でなければ浮遊している。浮遊した音が主音に向かうのだ。これがメロディである。浮遊しないでよいならば主音を弾き続ければよいわけだ。

ペンタトニックに限らず、 7 音階(リディアン)、 12 音階(半音階)もピタゴラスの 5 度( 4 度の裏返し)の連続から出来ている音階であるが、スケール音の少ない音階のフレーズの方が、完全 4 度感が強くなる。極端に言うと、 C とG の 2 音階だ。これは、 5 度と 4 度と 1 度のフレーズしか出来ない。スケール音の少ない音階のフレーズほど、浮遊するのだ。そして、 7 音階でもメジャースケール、マイナースケールは、ピタゴラスの 5 度の連続で出来ていないので、浮遊しないのだ。これは説明が長くなるので別項に譲る。 C メジャースケールの基音(ファンダメンタル)は、 F 音なのだ。

 ペンタトニックフレーズの特徴が浮遊感(調性が曖昧)であるとすれば、このフレーズの使えるシチュエーションはある程度限られてくる。モーダルな曲、またはコードではあるが全体で1 コード、 2 コード的な曲である。つまり、ドミナントモーションなどの機能和声で作曲されていない曲である。

さて、Dドリアンで 8 小節アドリブでフレージングするとする。インターバルで考えると、まず、 2 度。 2 度とはスケール上の隣の音である。スケールライクに上がったり、下がったりすることだ。跳躍しない。これはマイルス・デイビスが、自分のモード曲で多用している。次に3 度。これは、2 回連続することでトライアドが現れる。コード感が出てくる。次に 4 度。これは、ペンタトニックのフレーズで良いわけだ。 これはジョン・コルトレーン、マッコイ・タイナー、チック・コリアに見られる。5 度は 4 度の裏返し、6 度は 3 度の裏返し、7 度は 2 度の裏返しで同じ事だ。結局、基本的にフレージングは、 2 度 3度  4度しか無い訳でペンタトニックはフレージングにおいて、 2 度 3度と共に重要なアイテムとなっている。

ペンタトニックというのは、フレージング上、大事なものだが多用しすぎるとペンタトニックくさくなる。それだけ個性的なフレーズだとも言える。機能和声の 7 音階であるメジャースケール・マイナースケールと、 5 音階であるペンタトニックの中間的なスケールとして、また、ブルーススケールとして、ヘキサトニックに着目する。このヘキサトニックもペンタトニック+ 1 音と考えれば、十分浮遊する。トライトーンが必ずしも浮遊感を阻害するものではないが、ヘキサトニックにすることで、トライトーンである 2 音の同時使用を避けることが出来る。

尚、パーシケッティの  ” 20世紀の和声法 ” にあるどの音も根音として働き得るのであいまいになるヘキサトニックは、Dm7で考えると下から D, E, F, G, A, C  になる。これは、ピタゴラスの5 度の連続からできるスケールで、基音(ファンダメンタル)はF 。下から 完全5 度の連続で、 F, C, G, D, A, E, になる。それを D から並び替えたスケールだ。Dマイナーペンタ+ 2 になる。このヘキサトニックが、等音程スケールになり、どの音もトニックに成り得るので浮遊する。本来、ヘキサトニックのトニックとはそういう意味である。

ヘキサトニックであるホールトーンスケール、オクタトニック( 8 音階 )のコンビネーションディミニッシュは、 5 度の連続でできたスケールではないが、等音程スケールなので、浮遊する。セプタトニックであるリディアンは、 5 度の連続でできたスケールなので、浮遊する。

 

 

 (スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)

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これは、採譜したものではない。作ったものだ。

 1 段目 1 小節、 1 ~ 2 拍は、 Dマイナーペンタ+ 6 のヘキサトニック。 3 ~4 拍は、 Dマイナーペンタ+b5 のヘキサトニック。これは、プロでも頻繁に使用する。パット・メセニーなどは、ほとんどがこれとクロマチックアプローチだ。 2 小節 1 ~ 2拍は、 D マイナーペンタ+ 2 のヘキサトニック。半音を意識して使用するのがヘキサトニックは大事だ。ペンタトニックには半音が無いからだ。 3 ~ 4 拍。 C音から短 3 度下がって、 A 音からクロマチックアプローチで F 音へ。または、最初の C音から 4 拍表 2 個目の Ab音まで Dコンデミ。 4 拍裏はDマイナーペンタの断片であるG音、F音とする見方もある。

 2段目 1 小節、 1 ~ 3 拍は、Dマイナーペンタ+ 2 でフレージングしている。 4 拍は、クロマチックラインだ。 2 小節 1 拍、E, G, C は、C トライアド。G#音は、コードが Dm7 なので、ブルーノート。または、グリスノート。 1 ~ 2 拍は、 Aマイナーペンタで出来ている。私の頭の中では、Dマイナーペンタ+ 2 でフレージングしたつもりが、Aマイナーペンタになってしまった。これは、Dマイナーペンタ+ 2 の D, E, F, G, A, C は、Dマイナーペンタと Aマイナーペンタのコンビネーションで出来ている。 E を使用しないと Dマイナーペンタ、 F を使用しないと Aマイナーペンタになる訳だ。アドリブにおけるフレージングはこんなもので、ここでは半音にこだわって F 音が抜けてしまった。しかし、バッキングコードが Dm7 で F 音が鳴っているため、サウンドはヘキサトニックである。 3 拍頭の D#音は、グリスノート。それ以降の音はやはり Aマイナーペンタである。

 3 段目 1 小節、 1 ~ 3 拍表拍まで Dマイナーペンタ+ 2  。 3 拍表拍 2 個目の E 音~ 4 拍裏拍 Ab 音までクロマチック。最後の音 C 音は、 Dマイナーペンタの断片。 2 小節 1 ~ 2 拍は、頭の中では Aマイナーペンタ+ 2  。このペンタは、 Aマイナーペンタと Eマイナーペンタのコンビネーションで出来ている。 B音を使わなければ Aマイナーペンタ。 C音を使わなければ Eマイナーペンタとなる。しかしこの小節では、実際には E音を使用していないので、コードで表記すると Gadd9+ 4 というペンタトニックになる。これは結果であって、頭の中では Aマイナーペンタ+ 2 のつもりでフレージングしている。 3 ~ 4 拍は Aマイナーペンタで、 G#音、 C#音はパッシングトーンである。

 4 段目 1 小節。 1 拍 Eb, D, Db, C から 2 拍頭の B音までクロマチックスケール。 2 ~ 4 拍全体でみると、 Dマイナーペンタ+ 6  。Dドリアンの E音をオミットしたスケールである。このヘキサトニックはトライトーンを持っている。 2 小節、 1 拍 E, C#, A は、Aトライアド。これは、コードである Dm7のドミナントコード A7 を想定している。A7-Dm7 というコード進行を創作している。 2 拍頭のAb音はブルーノート。それ以降は、Dマイナーペンタ+ 2 でフレージングしている。Dドリアンスケールの B音オミットのヘキサトニックである。B音が無いことで、Dドリアンなのか、Dエオリアンなのかあいまいになる。浮遊するのだ。(2016/5/11)

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