マイルス・デイビスのクロマチックラインをフレーズアナライズしてパターン化をしてみた。
例えば、ドリアンスケールでフレージングする場合、順次にスケールを上ったり下ったりするだけではなく、スケールノートを使って、色々な組み合わせが可能である。それと同じようにクロマチックスケール(半音階)におけるフレージングも、クロマチックスケールを順次に上がったり下ったりするだけではない。そしてクロマチックラインは性質上、ハーモニーに束縛されにくい。そこでクロマチックラインをパターン化することで、アドリブにおけるフレージングにおいてどんなコード上でもそれが使用出来ると考えた。
(スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)
上記の8つのパターンを提示する。
クロマチックスケール上の音を組み合わせると言ってもどんな組み合わせでも良い訳ではない。クロマチックスケールの音を使って、全音階も出来れば、メジャースケールも出来る。そしてトライアドも出来るのである。しかしそれはクロマチックラインとは言わない。4 音のクロマチックラインは、並び替えることで 順次のクロマチックスケールの 一部になるか、または、それに近いものでなければならない。
<パターンA>
クロマチック な 3 音ともうひとつの 1 音。もうひとつの 1 音は、クロマチックの 3 音の中の 1 音のダブリング。クロマチックな 3 音の音の並びのバリエーションは可能。ここでは、 C, B, Bb となっているが、B, Bb, CでもOK。
<パターンB>
全音関係の 3 音+ 1 音。ここでは全音関係の 3 音は、D, C, Bb となっているが、組み合わせのバリエーションは可能。+ 1 音は、全音関係の 3 音の中の 2 音の間に入り、半音階を作る。この場合、 B のナチュラルでなく、C#でもOKである。
<パターンC>
4 音の内前半の 2 音は、全音関係。後半 2 音も全音関係。そして前半後半を組み合わせることによって、クロマチックラインになる。バリエーションとして C, Bb, A, Bナチュラル。B, A, Bb、C などがある。
<パターンD>
半音関係の 2 音ともう 1 つ別の半音関係の 2 音を合わせて、半音関係の 4 音を作っている。この 4 音は順次の半音階にはならない。
<パターンE>
短 3 度関係の 2 音と半音関係の2 音を合わせて、半音関係の 4 音を作っている。この 4 音は順次の半音階にはならない。
<パターンF>
2 拍 3 拍は、 A からクロマチックに順次で音を並べたものである。 1 拍目の 2 音はそれに付け加えたものである。 1 拍目の 2 音はここでは半音関係になっているが、半音でなくてもよい。
<パターンG>
1音から 3 音までクロマチックになっていて、 4 音は、飛ぶ。1 音 2 音が飛んで、 2音からクロマチックでもよい。
<パターンH>
1音から 3音が、上下共半音のディレイドリゾルブになっている。ディレイゾリゾルブ以外の音は、クロマチックでもクロマチックでなくてもよい。
この譜面は、” ESP “という曲の中でのマイルス・デイビスのアドリブパートから抜粋したクロマチックラインのほんの一部である。クロマチックラインの前後関係が大事と考えて、 2 小節単位で示している。トランペットであるが、実音で書いてある。また、半音階の一部を切り取ったような、順次のクロマチックラインについてはここでは触れていない。
<1 段目前半>
2小節 1 ~ 2 拍の 4 音がパターン A。半音関係の 3 音 Bb,, A, Ab 。Bb がダブっている。
<1 段目後半 >
1 小節最初の 4 音がパターン B 。全音関係の B, A, G の 3 音に、 Bb 音が加わって 2 つの半音関係を作っている。
1 小節 3 ~ 4 拍の 4 音がパターンB。 G, F, Eb の全音関係の 3 音に E を加えることで 2 つの半音関係を作っている。
1 小節 4 拍表の F から 2 小節 1 拍裏Gの 4 音がパターン H。 F, Eb, E がディレイドリゾルブ。
< 2 段目 前半>
1 小節 3 ~ 4 拍の 4 音がパターンA。Db, C, B の 3 音が半音関係。 B 音がダブっている。
2 小節 1 ~ 2 拍の 4 音がパターン G 。Bb, A, Ab が半音関係の 3 音。 4 音の E が跳躍している。
< 2 段目後半>
1 小節 1 ~ 2 拍の 4 音がパターンC。G と A, BbとAb,共に全音関係であるが、 4 音合わせて半音関係を作っている。 3 ~ 4 拍はパターンC 。または、パターン H。A, G, Ab でディレイドリゾルブになっている。 2 小節目クロマチックラインだ。
< 3 段目前半>
1 小節 1 ~ 2 拍の 5 音がパターンH。 2 拍目が C, Bb, B がディレイドリゾルブ。 3 ~ 4 拍の 4 音が、パターンC。 C と Bb, CbとA, 共に全音関係であり 4 音合わせて半音関係を作っている。また、この 3 ~ 4 拍の 4 音は、C, Bb, Cb でディレイドリゾルブになっており、パターンHでもある。
2 小節 1 ~2 拍は、パターン C。 2 ~ 3 拍はパターンG。A, G, Ab が半音関係の 3 音で Fが跳躍している。そして、この 2 小節全体の表拍が、 Bb, A, Ab, G と半音下降になっており、 2 小節全体のフレーズがクロマチックラインになっている。
< 3 段目後半>
1 小節目 4 拍裏 Cから、 2 小節 2 拍表 Aの 4 音が、パターンH。 B, Ab, A でディレイドリゾルブを作っている。
< 4 段目前半>
1 小節 2 ~ 3 拍の 4 音がパターンE。短 3 度関係の CとEb, 半音関係の Db と D。この 4 音を合わせて半音関係を作っている。
1 小節 4 拍表 Eb から 2 小節 1 拍裏 C の 4 音がパターン C 。 2 小節 1 拍裏Cから 3 拍のBbの 4 音がパターンD。C とCb, AとBb, 共に半音関係ではあるが、 C とCbは下降、 A と Bb は上行であり、 4 音合わせても半音関係になる。順次の半音階にはならない。
< 4 段目後半>
1 小節 2 ~ 3 拍の 4 音がパターンA。
< 5 段目前半>
1 小節 3 拍裏 Gから 2 小節 1 拍表Ebの 4 音がパターンB。全音関係の 3 音、 G, F Eb にE が加わって 2 つの半音関係を作っている。
1 小節 4 拍表 F から 2 小節 1 拍裏 Abの 4 音がパターンB。半音関係の 3 音F, E, Eb に跳躍音 Ab が加わっている。
< 5 段目後半>
1小節は順次のクロマチックライン。 2 小節 1 ~2 拍の 4 音が E。半音関係の Db と D, 短 3 度関係の Eb と C, この 4 音を合わせることで半音関係になっている。
2 小節 1 拍裏D から 3 拍表 Db の 4 音がパターン D。Dと Eb, CとDb, 共に半音上行であるが、前の半音上行のほうが、後ろの半音上行よりも高音である。 4 音合わせて半音関係になるが、順次の半音階にはならない。
2 小節 2 拍表 Eb から 3 拍裏 B の 4 音はパターンB。全音関係の 3 音 Eb, Db, D に Cが加わって 2 つの半音関係を作っている。
2 小節2 拍裏 Cから 4 拍表 C の 4 音がパターンA。半音関係の 3音C, Db, B に Cがダブっている。
< 6 段目前半>
2 小節1 ~2 拍の 4 音がパターンD。G とAb, Bb とA ,共に半音関係。 4 音合わせても半音関係。しかし、順次の半音階にはならない。1 拍裏Ab から 3 拍表Ab の 4 音はパターンA。また、 2 拍表Bbから3 拍裏Bb の 4 音もパターンA。そして、2 拍裏Aから 4 拍表B の 4 音は、パターンD。続いて、 3 ~4 拍の 4 音は、パターンB。これは、全音関係の 3 音、Ab, Bb, CにB が加わって2 つの半音関係を作っている。
<6 段目後半>
1 小節 1 ~2 ,拍の 4 音がパターンE。
1拍裏の Dからの4音がパターンD。
2拍表 Eb からの 4 音がパターンB。
2拍裏Cからの 4 音がパターンA。
3 拍表 Dbからの 4 音がパターンAまたはH。
2 小節 2 拍表Abからの 5 音がパターンHである。
(つづく)