ボサノバ・・・ダイアン・クラール、アストラッド・ジルベルト、サリナ・ジョーンズ それぞれのクワイエット・ナイツ(3)

スタン・ゲッツのCD  “Getz Au Go Go”  1曲目 ”コルコバード”が、英語名では ”クワイエット・ナイト・ザ・クワイエット・スターズ” になる。 ピアノのコードが一つ鳴って、アストラッド・ジルベルトの唄がいきなり始まる。この発声法は、クラシックでは有り得ない。マイクがあるからこそ可能な囁くような発声である。ベンディングがわずかで、ビブラートはみられない。ピッチは平均律的には少し甘い。例えば、クワイエット・スターズのスターズは少しフラットだ。しかしジャズなのでこの位のフラットはOKである。ピッチ補正が無い頃の録音でのこれは、立派だと思う。なぜなら、あまり唄いこんだ(トレーニングしたような)ボイスではないからだ。ストレート(唄の中で伸ばした音)にビブラートとは違う微妙に不安定なピッチの揺れがある。それが素人くささに繋がっている。意外にタイミングはほぼタメていない。何かが唄に乗っているかというと、それはほとんどない。スタン・ゲッツとはそこが大きく違っている。 ギターの 2 小節パターン ( 8分休符、8分、8分、8分休符、8分休符、8分、8分休符、8分、小節線、8分休符、付点4分、8分休符、8分、8分休符、8分)は、少しタメていて優しさがある。これとこれのバリエーションで全体の約 7 割を弾いている。ベースは、基本的に 2 分音符の連続で弾いている。サックスのアドリブソロでのベースは少し動きがある。普通のボサノバのベースに較べて少しタイミングが前にある。珍しい。とは言っても、ギターのパターンよりも少し後ろに音を置いている。ドラムの 2 小節パターン(4分、4分、4分、8分休符、8分、小節線、4分休符、4分、4分、4分)は、わずかにタメて、わずかに柔らかく、唄のバックを刻んでいる。リズム楽器の中では一番前である。サックスのアドリブソロではドラム 2 小節パターン(4分、4分、4分、4分、小節線、4分、8分休符、8分、8分休符、8分、4分休符)でリズムを刻んでいる。ほとんどタメていない。ボーカルのバッキングの時より前だ。サックスのソロは唄と同じタイミングで吹いている。ピアノのセカンドメロは、唄より後ろにあってかなり柔らかい。ギターのパターンよりも後ろである。ベースのタイミングとほぼ同じになっている。 サックスソロは、ベンディングだらけである。ビブラートもしっかりかかっている。音も胸が響いていて、太く大きい。アストラッド・ジルベルトの唄とかなり違う。スタンゲッツのベンディングは、やり方が変わっていて、動画を見ればわかるが、下唇を 1 cm位前後にスライドしてベンディングしている。スタンゲッツのテナー・サックスの音には、チャーリー・パーカーと同じものが乗っている。これはほとんど言われていないが、音楽であるかないか、位重要なことである。アストラッド・ジルベルトの唄とスタンゲッツのサックスの音の違いがわかりますか?(つづく)