アート ペッパー(アルトサックス)ー譜面に書いてないことー

CDアルバム「Art Pepper Meets The Rhythm Section」(アート ペッパー1957年録音
1曲目”Yon’d Be So Nice To Come Home To“のフレーズ以外をアナライズする。手元にコピー譜があり、それを見ながら音を聞いていく。
まず、ピアノとドラムによる 8小節のイントロ。当然だが、ピアノもドラムもアタック(発音)よりかなり後をリズムの点として演奏している。ドラムのアクセント以外はピアノもドラムもわずかにタメているが、この曲には最適な乗りだろう。8小節目の1拍目の裏から Alto Sax のソロが始まる。 Alto Saxのタイミングはピアノとほぼ同じ乗りでチャーリーパーカーと比べると若干後ろだが16分音符の切れも良好だ。最初のB音は、半音下からのベンディング(しゃくり)をフィンガリングを使って表現している。タンギングは半音下の音のみでBの音はしていない。以降タンギング無しと特記する場合以外はタンギング有りと考えてほしい。3拍目のE音は強弱と共にわずかながらベンディングが見られる。F#音も同様だ。E音もF#音も短めの4分音符と考える事ができる。このE音、F#音のわずかなベンディングについては意見の分かれる所だと思うが、ベンディングができないピアノではこの雰囲気は創れない。E音F#音をベンディングなしで吹いたときと、ベンディングした時の雰囲気の違いを確認してみるとよい。このわずかなベンディングがJazz,Blues,Rock,Pops,歌謡曲などの特徴である。クラシックにはあまり見られない。ある音からある音へのポルタメントはあるのだが・・・。この8小節目をリズム的にどう読むのがよいのか? まず1拍目表拍の 8分休符と裏拍にある付点 4分音符は1拍目表拍 8分休符裏拍に装飾音のついた 8分音符。その 8分音符と 2拍目の 4分音符をタイで繋いだ形にする。 3拍目、 4拍目は譜面通りにする。これを実際にはどう吹くかだが1拍目の 8分休符と装飾音のついた 8分音符は少し跳ねている。跳ねた裏拍のところに装飾音が来るようにタイミングを決めている。 2拍目のタイで繋いだ4分音符は 4分の 3位の長さにしてその後ろに少し空間をつくる。タンギングで音を消してもすぐには消えないので聴感上は 2拍目と 3拍目にすきまが無い様に聞こえる。 3拍目の 8分音符と 8分休符も跳ねている。 8分休符は跳ねた時の裏拍の長さである。8分音符は跳ねた時の表拍の長さだがタンギングで消音してもすぐには消えず音が残ることを頭において吹く。アタック後の伸ばす音は小さくする。 4拍目も 3拍目と同様である。

リハーサルマークAの 1小節目のG音、下からのベンディングの後、ベンド幅小さなビブラートで 3拍目の頭で音を止めている。 2小節目の 3拍目、F#音はのどを使ったやや深めのベンディング。アートペッパーは 8分音符の連続を 2通りの方法で吹き分けている。 1つは表拍が長めでなめらかに聞こえるもの(表拍と裏拍のすきまが小さいもの)。もう 1つは表拍が短めではぎれよく聞こえるもの(表拍と裏拍のすきまが大きいもの)。すきまが小さいものを(A)、すきまが大きいものを(B)としよう。跳ね方は両方共、イーブンに近く、表裏の比が 5.5 : 4.5 位だろう。 2小節目 4拍目の 8分音符の連続は(A)である。表拍のE音にわずかにベンディングがみられる。 3小節 1拍目の頭のE音は、わずかにベンディング、次のB音はビブラートで 3拍目の頭で止めている。特徴的なのは、 3拍目の頭のタンギングが軽いアタックの様にはっきり音が聞こえる事である。 1拍目の 2つの音の跳ね方は(A)だ。4小節後半の 8分音符 4つの連続は(B)になっている。 5小節 2拍目の 2つの 8分音符は表拍が短いが裏拍がベンディングになっており長めになっているので、すきまは小さくなめらかに聞こえる。裏拍の 8分音符はタイで繋がり、その後 3拍音が伸びている。その伸びたE音は少しづつ大きくなりピッチが少しづつ高めになり、その後ビブラートがかかる。 6小節 2拍目裏の16分音符 2つ連続の 2つ目の音はタンギングしない。 3拍 4拍目の 8分音符 4つの連続は(A)だ。最後の 8分音符G音は次の 7小節目の全音符とタイで繋がっている。この全音符はビブラートがかかり 8小節目の頭で軽いアタック音で止まる。8小節目の 3拍 4拍は頭抜きの 2拍 3連でベンディングはない。この 2つの音とイントロの 8小節目 3拍 4拍の 2つの音を聞き比べて雰囲気の違いを確認してほしい。 9小節目、頭のC音は下から上にわずかにベンディングしてビブラートがかかっている。 4拍目の裏のB音は下からわずかにベンディングしてビブラートとともに次の10小節 2拍目の頭で軽いアタック音で止まる。10小節 3拍 4拍のD#,F#音はイントロ 8小節 3拍 4拍のE音F#音と同様に強弱とともに下からわずかにベンディングしている。11小節頭のA音は下からのベンディングの後、ビブラートがかかっている。4拍目の 8分音符 2個は 5小節 2拍目、 9小節 4拍目と同様で表拍は短いが裏拍に下からのベンディングがかかり長めになって隙間が小さく滑らかに聞こえる。11小節最後の音はベンディングの後、ビブラートとともに次の12小節 2拍目の頭で軽いアタック音で止まる。12小節目 3拍 4拍の 8分音符 4つの連続は(B)だ。13小節 1拍目は私が見ているコピー譜ではA音になっているが、これはB音の誤りだ。このB音は、ビブラートの後、13小節 2拍目の頭で軽いアタック音で止まる。14小節 1拍目表拍の 8分休符と裏拍の 8分音符は跳ねている。2拍目の 1拍 3連 3つの音は全部タンギングしているがタンギングしても音はすぐに消えないので滑らかに繋がって聞こえる。 3拍目の 1拍 3連 2つ目 3つ目の音はタンギングしていない。そして3つの音すべてのピッチが低くなっている。 4拍目の 2つの 8分音符の跳ね方は(B)だ。15小節目は全部 8分音符ですが(B)で跳ねている。16小節目も頭に休符があるが同様である。17小節 1拍 4分音符のG音はビブラートがかかっており 2拍目の頭で軽いアタックで止まる。 3拍目 4拍目は(B)で跳ねている。18小節 1拍目表拍 8分音符のF#音は(A)の表拍の長さでアタックの後、小さくし軽くビブラートをかけながらわずかにベンディング。2拍目も同様だ。3拍目 4分音符のE音はベンディングしながら次の音のアタックまで伸びている。 4拍目の 2個の 8分音符は(A)だ。最後のE音はわずかにベンディング。19小節 1拍目表と裏は(A)で裏拍のB音はビブラートをかけながら伸ばして 3拍目の頭で軽くアタックして止めている。20小節 3拍 4拍の 8分音符の連続は(A) と (B)の中間くらいである。21小節 1拍目は跳ねている。 2拍目表拍 8分音符 G音はわずかにベンディング。裏拍 8分音符 E音はしっかりベンディングしビブラートをかけ、22小節 3拍目のアタックまで伸びている。22小節 3拍 4拍 8分音符の連続は(A)で 3拍目表拍の D音はわずかにベンディング。そして最後の G音は、 23小節目全部にビブラートをかけながら伸ばしている。

ここではピッチが真っ直ぐなアタックを SA(ストレイトアタック)、ピッチが曲がるアタックを BA(ベンディングアタック)と呼ぶことにする。

24小節 B音 C音はどちらも短めの 4分音符で C音は BA.。 25小節 E音は SA,ビブラート。4拍目表拍 C# 音裏拍 D音の跳ね方は (A)で、 D音はビブラートで 26小節 2拍目の頭で軽くアタックして止めている。 26小節 4拍目表拍 F# 音裏拍 8分休符の跳ね方は(B)で F# 音は短めだ。 27小節、跳ね方は全部(A)で、 1拍表拍 A音 2拍表拍 A音、 4拍表拍 A音はBA。 28小節頭の E音は BAの後ビブラートで 2拍目の頭で止めている。 3拍 4拍の 8分音符、跳ね方は(B)である。 29小節 1拍目、跳ね方は (A) ,表拍 B音は BA。 2拍目 G音も BAで、ビブラートで 3拍目の頭で止めている。 30 小節 1拍 2拍は次のように考えたほうがよいだろう。 1拍目表拍 8分休符裏拍 A# 音 8分音符、 2拍目表拍 A# 音 8分音符裏拍 E音8分音符。 1拍目裏拍 A#音と 2拍目表拍 A#音をタイで繋ぐ。そして、跳ね方は (B) だ。A#音は BA。 3拍目の G音も BAでビブラート、4拍目の頭でとめる。 31小節目の 1拍 3連の連続はスタッカート気味に短めにタンギング。 32小節 1拍目の 1拍 3連 3音はタンギング無し、 2拍目 8分音符の跳ね方は (A) 、 3拍 4拍の跳ね方は (B) である。

ピッチについて・・・イントロ 8小節目の 3拍目 E音 4拍目 F#音は少し高めになっっている。リハーサルマーク Aの 2小節 3拍目 F#音もわずかに高め、 3小節 1拍目 E音も少し高め、 4小節 3拍目の B音 C音は少し低め、 4拍目の D音 D#音は高めだ。 6小節最後の G音は低め。 9小節 C音も低め。 11小節 A音も少し低め。 13小節 B音も少し低め。 14小節 3拍目の 3連は低い。 17小節 1拍目の G音は高め。最後の G音も高め。 20小節最後の D#音は高め。 22小節最後の G音低めである。 24小節 3拍目の B音は少し高め。 27小節 1拍目 2拍目の A音は低め。 29小節 1拍目 B音 2拍目 G音は高め。 30小節 A#音 G音も高め。 31小節全部の音が少し低め。 32小節 1拍目は全部低め、 2拍目の A音 G音が 3拍目の A音は少し高め。次の Bb音 A音 G音はわずかに低くなっている。

ピッチについてはほんのわずかなズレが時々あるだけで、ピッチにうるさい私でも聞いていて気になるような所はまったくない。ピッチ補正のない時代の録音だが安心して聞くことが出来る。チャーリー・パーカーの場合、聞いていてピッチに違和感のある音が時々ある。アート・ペッパーはパーカーを上回る優秀なピッチコントロールの持ち主ということだ。その他の部分もパーカーと較べてみよう。タイミングについては、アート・ペッパーの方がほんの少し後ろに音を置く。タイミングによってその音が持つ緊張感が変わる。パーカーに較べるとわずかに柔らかく聞こえるがそれでも十分シャープに聞こえる。チャーリー・パーカーとアート・ペッパーのタイミングのズレ幅は、チック・コリアとハービー・ハンコックのタイミングのズレ幅の半分位でまったく気になるものではない。音についてはパーカーの方が力強くより遠くへ飛ばす吹き方である。ビッグバンドではないので、そんなに遠くへ音を飛ばす必要はない。マイクがあるからだ。 聞いた感じでは、アート・ペッパーは胸から喉にかけて響かせて軽めに吹いている。ビブラートは、アート・ペッパーの方がパーカーよりベンディング幅の小さいものである。パーカーの吹き方のほうが、フレーズの中でベンディングを多用していてポルタメントも見られる。スタンダード等のテーマでは、パーカーの方がより音価の短い音符の連続で派手にくずしている。音に何かを乗せるという点では、両方ともほぼ同じやり方で同じものが乗っているがパーカーの方がアート・ペッパーよりやや濃い状態である。音の印象はやや違うが、似ている部分の方が多く、アート・ペッパーの吹き方はパーカーの影響を強く受けていると言えるだろう。

You’d Be Soのアドリブパートもテーマとほぼ同様と考えてほしい。 16分音符の連続は半分(スタッカート)位に短く吹く。リバーブもかかっており音もすぐには消えない。タンギングレガートにならないように気をつけよう。アドリブのフレーズアナライズに関しては、他でやっている人がいると思うのでそちらを参考にしてもらいたい。(完)2014/07

音に何かを乗せる・・・美しい音とは

ピッチ

音の先端(アタック)を合わせれば、2つの音が同時に聞こえるかという問題

譜面を重要視しすぎると音楽を誤る