チック コリア、コンデミ、クロマチック、アルタード(1)

BESSIE’S BLUES 」 における チック・コリアのアドリブ右手フレーズの一部をアナライズする。(スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)

BESSIE’S BLUES」は、CD  ” CHICK  KOREA  AKOUSTIC BAND ” の 1 曲目にある C BLUES である。

この曲のアドリブフレーズの一部を抜粋して、アドリブにおける フレージング アイディア を探ることにする。

ペンタトニックの表記だが、特にアルタードペンタトニックにおいては統一されていないので、ここでの表記法を説明する。

ペンタトニックを、 基本的に「 4 音コード+1  」と考える。トライアドの場合、「 トライアド+2 」になる。例えば、 Cメジャーペンタトニックは、 C6 (2)ペンタ となる。 Cマイナーペンタトニックは、 Cm7 (4)ペンタ となる。また、 C, D, E, G, Bb のペンタトニックは、 C7 (2)ペンタ。C, Db, E, G, Aのペンタトニックは、 C6 (b2)ペンタと表記する。( )の中は、音を加えるという意味である。

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 (譜面上、左クリックでズームします)

  1.      1 小節 1 から 2 拍の、 Gb, Ab , Bb  は、Ab ミクソリディアン または、 D アルタード。3 から 4 拍は、クロマチックライン。 2 小節目は、 G アルタード、または、 Db 7(9 th )ペンタトニック。

  <フレージング アイディア  1  >  Ⅱb  ミクソリディアン + クロマチック + Ⅰ アルタード

2.       C7  の代理コード F#7  と考え、すべて、 F# ミクソリディアン。チック・コリアは、 F# ミクソリディアンをペンタトニックスケールで捉え直してアドリブしている。ここは、Db m6 (2)ペンタトニックでフレージングしている。  B ナチュラルは  Db m6 (2)ペンタトニックのスケール外の音であるが これはコードである  C7 の  7th の音に半音でぶつけている。チック・コリアが考えているモーダルブルースは、M7  と 7   そして 3 と b3  を、わざと曖昧にして、輪郭をぼかしている。F#ミクソリディアンをペンタトニックで弾いても、F#ミクソリディアンの音であることは変わらないが、ペンタトニックで弾いているところは、やはりペンタトニックに聞こえる。

<フレージング アイディア   2  >   Ⅱb  m6 (2)ペンタトニック+Ⅰの M7 の音

 

3.       1 ~ 3 小節の 2 拍まで、 8  分、 付点 4 分の リズミックな モチーフの 展開形。 3 小節 4 拍目、 4  小節 1 拍裏 2 拍表の  C, Bb は左手で弾く。スケールは、 1 ~ 2 小節、C ドリアン、 3 ~  4 小節 C  ミクソリディアン。 チック・コリアは、1 小節頭から 2 小節 2 拍まで C  m6 (2 )ペンタトニック、 2 小節 3 拍目~ 3 小節 4 拍目まで C 7 (2)  ペンタトニックで弾いている。 4 小節 4 度のフレーズは  C 7 sus4 (2)ペンタトニック の音である。

4.       C7 代理、F#7。 4 拍目の F ナチュラルであるが、 C7 は トニック 7th  なので、F#7 もトニック 7th と考えて、 F# イオニアンというのがここでは無難な解釈である。しかし、チック・コリア的には、 3 拍までF ミクソリディアン。 4 拍目は意識的に M7th  の音を 7 th コードにぶつけている。この曖昧さが、チック・コリアのモーダルブルース感である。F ナチュラルは、 C7  においては、アボイドであるが、当然無視している。

<フレージング アイディア  3  >      ミクソリディアン+ M7

5.    1 小節最初の 4 つの音は、C ドリアン又は G アルタード。 3 拍目~ 2 小節 3 拍目まで C コンデミスケール。 1 小節 3 拍目から C トライアド、または C 6 (2)ペンタトニック。

<フレージング アイディア  4  >      Ⅴ アルタード+ Ⅰコンデミ

6.       1 小節は F トライアド。 2 ~ 4 小節、 8 分、 8 分、 4 分のリズミックなペンタトニックモチーフの展開。スケールは、1 ~ 4 小節 2 拍まで C ミクソリディアン。 4 小節 3, 4 拍は C アルタード。モチーフは全部ペンタトニックでフレージングしている。

<フレージング アイディア  5  >      ペンタトニックモチーフ+スケール

 

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 7.      1 ~ 3 拍は、アルタードスケール、または Db7 のアルペジオ。 4 拍目は、Fミクソリディアン。クロマチックなラインとも言える。 4  拍目の 2 音は、直前のスケールの音に無い、別のスケールの 2 音。最初の Db から 3 拍目の Ab まで Db 7 (2)ペンタトニック。

<フレージング アイディア  6  >     Ⅰアルタード+別のスケールの 2 音。

8.       最後の A音以外、G コンデミ。または、 3 拍の表拍まで G コンデミ。残りは、 C コンデミ。C7 を G7 –  C7とコード進行を想定してアドリブしている。最後の 3 音は、 A トライアドになっている。チック・コリアは、コンデミをアルタードペンタトニックで想定して、それでフレージングしている。全体に D 以外は、 A 6 (2)ペンタトニックでフレージングされている。 D は、グリスノート。

<フレージング アイディア   7  >    ⅴコンデミ+別のスケールの 1 音。

9.       1 小節は B コンデミ。または、 C ドリアン。 2 小節は、 C コンデミ。B7 - C7 ( Em7b5)の流れだ。または、 1 小節 C トニックディミニッシュ。 2 小節目 C コンデミ  。と、見ることもできる。なぜなら、 C のブルースなので、C7 でもトニックなのである。 2 小節最後の Eナチュラルは、 1 小節  Eb  に半音でぶつけて、マイナーなのか メジャーなのか わからないフレーズにしている。 1 小節 4 拍目 Eb から 2 小節 2 拍目 C まで 、F 7(2) ペンタトニック。次の Bb から E まで F# 7(2)ペンタ。

<フレージング アイディア   8 >      Ⅶ コンデミ+Ⅰコンデミ。

10.        1 ~ 3 拍は、 F# ミクソリディアンそして、 1 , 2  拍は、 B 6(2)ペンタトニックでもある。 4 拍目は、 C7  のコードトーン。 2  拍目 B から 3 拍目 Ab まで Ab m6 (2)ペンタトニック。この一つのフレーズの中に、 3,  b3  ,  M7,  b7   があり、マイナーなのかメジャーなのか、M7  なのか、 7th  なのか、わからないフレーズになっている。ブルースにおいて、3 , b3  が、  曖昧なのはあたりまえだが、 7th  に M7  をぶつけるのは、稀である。

<フレージング アイディア   9 >      Ⅳ# ミクソリディアン+Ⅰのコードトーン2 音。

11.    1 小節 1 拍目裏 B から、 3 拍目裏の  F  まで、半音を混ぜた G ミクソリディアン。 1 小節 3 拍目から 2 小節全部が、 G アルタード。 2 小節 2 拍目から G+ のコード分散。 1  拍目  B  から 3 拍目 G  まで  G 6 (2)ペンタトニック。  Bb  は、パッシングトーン。 3  拍目  F  から  2  小節  1  拍  Ab  まで、 Ab m6 (2)ペンタトニック。最初の 2 音、 B,  Bb,  は、このブルースの トーナリティである  C  の M7,  b7  。そして、このフレーズのコードである G7  の  3 ,   b3   にあたる。 1  小節の終わりと 2  小節の頭も同じだが、コードの輪郭をぼかしている。チック・コリアは、これを強調しているといえる。

12,    1  拍目の裏から 4 拍目表まで  G アルタード。そして、裏拍にコード C  の  3  度の音をプラスしている。または、1  拍目の裏から 3  拍目の表まで  G アルタード、 3  拍目の裏から  4 拍、  C コンデミ。また 1 拍目の裏G音はグリスノート。 2 拍から最後まで F# ミクソリディアン とみることも出来る。ここにも   M7,  b7,  b3,   ナチュラル 3   がある。フレーズの最後に  b3   に ナチュラル3   をぶつけることで調性の曖昧さを強調している。

<フレージング アイディア   10 >       Ⅴ アルタード+ Ⅰコードトーン 1  音。

 

チック・コリアは、イタリア系アメリカ人ということだが、バルトークの影響を、受けたとされている。そして、JAZZピアニストなので、黒人音楽の影響も受けている。近代ヨーロッパ音楽の影響も当然ある。バルトークといえば、ハンガリーなど、西アジア音楽の影響を受けた 東ヨーロッパの農民音楽。それは、教会旋法と、ペンタトニックである。チック・コリアは、バルトークの影響を受け、ペンタトニック( 5 音)、ヘキサトニック( 6 音)、セプタトニック( 7 音)、オクタトニック( 8 音)を、同列と捉えている。ペンタトニックで、すべてを説明しようとしているわけではない。時間的に 7  音階よりペンタトニックが先に存在していたのは事実のようで、ペンタトニックから、 6 音モード、 7 音モード、になったと考えるのが 素直である。東ヨーロッパ農民音楽からの影響の二つ目は、Ⅱ-Ⅳ-Ⅰのハーモニー進行である。これは、近代ヨーロッパ音楽の、Ⅱ-Ⅴ-Ⅰには無い進行である。ペンタトニックとは、4 度 の音階である。たとえば、 C ペンタトニック( ド、レ、ミ、ソ、ラ)は、ミ、ラ、レ、ソ、ド と、すべて完全   4  度の音階となる。ペンタトニックのフレーズとは、  4  度のフレーズである。そして、 4  度のフレーズには、浮遊感がある。逆に浮遊感がないのは、完全  5  度、長 3  度もフレーズである。チック・コリアの言葉で、記憶に残っているのは、「右手のフレーズを、そのまま、左手でボイシングする。」という内容の言葉である。これは、右手で、ペンタトニックのフレーズを、弾いたら、左手で同じペンタトニックの、ボイシングをするということ。そして、これはこうなる。右手でペンタトニックのフレーズを弾いて、左手で 4 度のボイシング。チック・コリアを大雑把にいうと こうなるが、いつも 右手で ペンタトニックを弾いている訳ではない。ドリアンもコンデミも、ペンタトニックも同列だからだ。右手でコンデミを弾いたら、左手でもコンデミ。アボイドはない。ただし、浮遊感のある 4  度と 短 3 度、 2  度を多用したボイシングになる ということだ。完全 5 度もボイシングに使用している。特に低音のⅠとⅤの完全 5 度は多い。低音の、完全 5 度の上に、 4 度の積み重ねが乗っている構造である。長 3 度は少ない。SUS4は、 4 度と同じことだ。トライアドも使用している。一方、ドリアンの場合は、ドリアンに内在する ペンタトニック、または、 6  音モード(ヘキサトニック)を弾く場合が多い。 7 音モード、 8 音モードは、数種類のペンタトニック、2 種類の 6 音モード の組み合わせで考える。但し、基本的には、そのモードの何の音を持ってきて、フレージング、またはボイシングしても良いのである。

左手は、当然、右手と同じスケールをペンタトニックに置き換えたボイシングである。そして、ドリアンをペンタトニックで弾いた場合、ドリアンではなく、ペンタトニックのフレーズに聞こえるのだ。

コードジャズとのハーモニー上の大きな違いは、サイクル オブ 5th   ではなく、モードジャズは、サイクル オブ 4th が特長である。Ⅱ-Ⅴ -Ⅰ ではなく、Ⅱ-Ⅳ-Ⅰ なのだ。

 

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13.   1 小節 1 ~ 3 拍は、G コンデミ。4 拍目から 2 小節 3 拍目の頭まで、クロマチックライン。 3 ~ 4 拍は、 C アルタード。 2 小節のように、 C7  において、フレーズの頭に、 B ,  Bb を、フレーズの最後に E. Eb,。目指すところでコードの輪郭を曖昧にしている。

<フレージング アイディア   11 >   Ⅴコンデミ+クロマチック+Ⅰアルタード

14.     1 小節 1 ~ 2 拍は、Cアルタード。または、 F エオリアン。 3 拍目から 2 小節は、 F7  のアルペジオ。

15.       1 ~ 2 小節すべて、 Cコンデミでフレージングしている。1 小節 3 拍目 C から 2 小節 2 拍 Bb まで、 C 7 (b2) ペンタトニック。 2 小節 2 拍目 C# から 3 拍目 D# まで、 Eb7  のアルペジオ。 4 拍目の 2 音は、 C7  のコードトーンだ。

<フレージング アイディア   12 >  Ⅰ7(b2)ペンタ+Ⅲb7  + Ⅰのコードトーン2 音

16.        1 小節 1 ~ 3 拍は、 Db 6 (2)ペンタ。 3 拍目、  Bb ,  F の完全 4 度を、 4 拍目で半音上にずらしている。 2 小節は、半音の混ざった C ハーモニックマイナー。 1 拍目、 4 拍目、の 短 3 度を半音階で繋いでいる 。 1 小節 3 拍 4 拍は、クロマチックラインである。 1 小節のスケールは、 Dbミクソリディアン。コード進行は、  D7- G7 だが、 G7 一発と捉えて、Dミクソリディアン+半音の混ざった Gハーモニックマイナーパーフェクト 5 th ビローで弾いている。

17.        1 拍目~ 3 拍目まで F ドリアンb5  。 4 拍目は、F7  の  b9  である。また、 1 拍 2 拍は、 Ab m6 (2)ペンタトニックになっている。

<フレージング アイディア   13 >     Ⅰドリアンb5+Ⅰコードの b9  。

18.        C コンデミのスケールで、最初に F#音が増 4 度下へ飛んで、 C  ~ G までスケール通り。 G から完全 4 度上の  C へ飛んで、 Gb のトライアド。

 

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 19,     ド、レ、ミb, ファ、ソ、シb,の 6 音モード(Eb 6 (2)ペンタ+D)は、ここ以外にも、何度か出てくる。スケールは、 F ミクソリディアン。ペンタトニックで言えば、 Bb 6 (2) ペンタと、 Eb 6 (2)ペンタのコンビネーション。2 小節 3 拍裏から後は、クロマチックライン。最後の音は、 F ミクソリディアンのスケールの音。

20.      1  小節最初の A 音は、Ab7  の b9 , または、グリスノート。次の Ab音から C 音まで  Ab ミクソリディアン。ペンタトニックで言えば、  1 小節 1 から 2 拍は、 F# m6 (2)ペンタ。 3 拍  4 拍は、 Db 6 (2)ペンタ。2 小節、1 拍目の B 音から  G 音まで半音階。 2  小節 3 ~ 4 拍は、 G+の トライアド。または、コンデミ。

21.      1 小節 1 ~ 3 拍は、 C コンデミ。ペンタトニックで言えば、C 6( #2 )ペンタの4 音。1 ~ 2 拍に、 Cmトライアド。 4 拍目から 2 小節全部、 G アルタード。スケールをそのまま上がって行き、 G で止まっている。 2 小節 4 拍目 4 分休符は、 G が支配している。

 <フレージング アイディア   14 >    Ⅰコンデミ(Ⅰmトライアド)+Ⅴアルタード+最後の音はⅠ7のコードトーン

22.       1 ~ 2 拍は、短 2 度の 2 音の連続。これは、コンスタントファンクション。 3 ~ 4 拍は、 Cミクソリディアン、又はドリアン。C#は、グリスノート。

23.       1 小節 4 拍目 Ab まで、半音階。 4 拍目Ab から 2 小節 2 拍目 C  まで、C アルタード。 3 拍目 B は、C  へ向かうグリスノート。 4 拍目は、6 度跳躍して、Cアルタードにない、A。

<フレージング アイディア   15 >       クラマチック+Ⅰアルタード+直前のスケールにない  1  音。

24.     1 ~ 2 拍は、 C トライアド。3 拍~ 4 拍は、 C アルタード、 F#7 (2) ペンタトニックの中の 4 音でもある。