ハービー・ハンコック、ターゲッティング、オーギュメント(1)

ハービー・ハンコックの右手アドリブフレーズの一部 をアナライズする。(スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)

ONE FINGER SNAP」は、CD  ” EMPYREAN  ISLES  ” の 1 曲目にある。

この曲のアドリブフレーズの一部を抜粋して、アドリブにおける フレージング アイディア を探ることにする。

 

CA3F0054          1.   1小節、コードは Gm7(b5) であるが、C のコンデミでフレージングしている。 G のディミニッシュスケール(前半)とする見方もあるが、ここは Gm7(b5) - C7 を C7 一発と捉えて、この 2 小節を C コンデミでフレージングしたと考える。フレーズ的には、上がって下がる何でもないフレーズだ。

2,  1 小節、 1 ~ 2 拍は、半音フレーズ。 3 ~ 4 拍は、 なぜか F ドリアン。 2 小節、 1 ~ 2 拍表拍は、 C コンデミ。  2 拍裏から 4 拍裏まで Bb コンデミ。 1 ~2 拍表拍の C コンデミは、普通は、F コンデミとするのが多いが、ここは A7 - Dm7(b5)  /  Bb  と考えて半音上向のドミナントモーションとみる。チック・コリアも稀にこういうことをやっている。 1 小節目最後の C 音は、弱拍にあるので、あまり違和感は無いが、少し変なところがハンコックの良さである。

3.  1 小節、 2 ~ 3 拍。 C エオリアン(Dロクリアン)。 E ナチュラル音は、パッシングトーン。 4 拍から 2 小節 2 拍まで、 G コンデミ、または、 G アルタード。 3 ~ 4 拍は、 G ミクソリディアン。 Eb 音は、パッシングトーン。全体としてみれば、 2 小節 2 拍まで、 Cマイナー。 2 小節 3 ~ 4 拍は、 C メジャー。

4,  1 小節。コードは、 Gm7(b5) であるが、 C コンデミでフレージング。 2 小節は、 C アルタードになっている。全体的に眺めれば F マイナーである。

5,  1 小節、 2 小節共に、 C コンデミでフレージングしている。ハンコックは、 Gm7(b5) を C コンデミ(G ディミニッシュ)でフレージングすることが多いようだ。 Gm7(b5) のコード構成音 4 個の内、 3 個が、 C コンデミスケール音にある為だ。この Gm7(b5) を C アルタードでフレージングした場合、調性的にはもう少し、アウトサイド寄りになる。ハンコックは、この Gm7(b5) を G ドリアン、又は A アルタードでフレージングすることもある。 A アルタードについては、次の 6 で説明する。ここでのフレージングで、特徴的なのは、フレーズの頭の Eb7 のアルペジオだ。  Eb7 のアルペジオをフレーズの頭に置くことで、 Eb7 のサウンドを目だ立たせバッキングの Gm7(b5) に Eb7 をぶつけて、ポリハーモニー的な効果を創ると共に、コンデミの暗さを緩和している。全体的には、F マイナーであるが、 1 小節の C コンデミは、F メジャーのサウンドが混ざっていると言える。 A のナチュラルがある為だ。

6,  1 小節 3 ~ 4 拍。コードは Fm7(b5) だが、 G アルタードでフレージングしている。Eb のトライアドがあるのも特徴的だ。 G アルタードのスケール音は、Fm7(b5) のコード構成音 4 個をすべて持っている。その意味で、 Bb コンデミでフレージングする時よりも、インサイドである。そして  2 小節の Bb7 も G アルタードでフレージングされている。これは、 Bb7 を Bb7(b9) と考えた場合、 B ナチュラル音と、F 音のトライトーンが生じ、このトライトーンから、 G7 が、現れる。 Bb7(b9)  =  G7(b9) となる。これは、 Bb7(b9)  =  G7(b9) = E7(b9) = Db7(b9) ともなり、 Bb7 のフレーズは、短 3 度上(Db7)、減 5 度上(E7)、 長 6 度上(G7)にずらしても OK ということになる。これは、フレーズの短 3 度ずらしと私は呼んでいて、減 5 度ずらし、長 6 度ずらしも OK ということだ。7th  のフレーズに限らず、 マイナー 7th 、メジャー 7th、 その他どんなフレーズでもずらせる。他に、オーギュメントを考えると、長 3 度ずらし、 増 5 度ずらしも OK となる。チック・コリアは、 C のブルースにおいて、 C7 を EM7 でハーモナイズしている。スティーヴ・グロスマン(TS )は、菊地雅章( P)に、「ミスター オーギュメント」と言われている。増 5 度ずらして、吹く時が多いからだ。この譜面におけるハンコックは、 Fm7(b5) - Bb7 を Bb7 一発と捉えてそれを 6 度上にずらしてフレージングしている。全体としてみると、 G アルタードは、 Eb7 に近いが、 B ナチュラル音と Db 音を持っているので、調性を Eb としてみればマイナー的な要素が混じっている。メジャーの 3 度と、マイナーの b6 ,  b7  が共存しているサウンドだ。大昔から、音楽はメジャーとマイナーの混合である。

 

AUTUMN  LEAVES 」 をアナライズする。(スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)

AUTUMN  LEAVES 」は、マイルス・デイビス のCD  ” Miles Davis in Europe  ” の 2 曲目にある。

この曲のアドリブフレーズの一部を抜粋して、アドリブにおける フレージング アイディア を探ることにする。

 

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7,  1 小節  D音から 2 小節 1 拍 F#音 A音で Dのトライアドになっているが 1 小節D音~ 2 小節 2 拍まで Dのコンデミで出来ている。フレーズの頭にトライアドを持ってくることによって、コンデミの暗さが緩和される。 2 小節 3 ~ 4 拍は、 Gドリアン。 2 小節のコードは、 1 ~ 4 拍まで、 Gm7であるが、アドリブ時には、 1 ~ 2 拍, D7,   3 ~ 4 拍,  Gm7 のコード進行を頭の中で創作している。本来のコードであるGm7 に対して、 D7(Dコンデミ) でのフレージングは、当然アウトサイドになる。アドリブでアウトする場合、デタラメに演奏するのではなく、アウトのフレーズにしっかりしたシステムがあるということだ。この例における、コード進行の創作は短いものだが、ハンコックは、 4 小節くらいのコード進行創作の例も多く見られる。 3 小節目のスケールは、 C リディアン7th。フレーズの頭に D トライアドが見られる。

8,  1 小節は、すべて F アルタードでフレージング。 2 小節 1 ~ 2 拍は、 Bb リディアンで、 2 拍裏の C# 音は、パッシングトーン。もう一つの見方は、 1 拍表の F 音は、 BbM7  のコードトーンで、この F 音を含む 4  音が次の D 音に向かうアプローチノート。囲い込みタイプのターゲッティングである。 3 ~4 拍は、 Dm7 のアルペジオ。

9,  1 小節 1 ~ 2 拍は、 F#m7  のアルペジオ。ここのスケールは、B ドリアンで、この B ドリアンのスケール音から生まれたアルペジオだ。ルートである B 音の完全 5 度上のマイナー7th アルペジオだ。このほか同じく、長 2 度上のマイナー7th アルペジオ、長 2 度下、短 3 度上のメジャー7th アルペジオ、完全 4 度上の 7th アルペジオなども可能となる。 B ドリアンのスケール音の組み合わせでできるコードは、何でも可である。 3 ~ 4 拍は、 E コンデミ。 2 小節は、Am のコードトーン。 2 小節はマイナーとなっている。メジャーとマイナーの混合で見ると 1 小節 1 ~ 2 拍は、 B ドリアンなので調性は、 A メジャーである。フレーズに C#音があるので、 A マイナー(A メロディックマイナー)とはならない。完全メジャーである。マイナーは混じっていない。 3 ~ 4 拍は、 E コンデミ。これはコード A から見ると、 b2 ,  b6, b7 を持っているので、マイナーが混ざっている。しかし、ナチュラル 3  を持っていて、b3 が無い。このナチュラル 3 が在って、b3 が無いというのが、メジャーをより強く感じさせる。コンデミは、マイナーが混じっているが、メジャーがやや強いと言える。(逆にアルタードは、b3 が在ってナチュラル 3 が無いので、ほとんどマイナーである)そして、 2 小節目で Am となっている。 1 小節 1 ~ 2 拍は、完全に A メジャーで、3 ~ 4 拍は、 A メジャーに A マイナーが、混入してきて 2 小節目で Aマイナーになる。こんな流れである。

10,  1 小節 2 拍裏 A 音は、コードトーン。 3 ~ 4 拍の 4 音は、 2 小節頭の F# 音に向かうアプローチ音である。ここもターゲッティングだ。 2 小節  1 ~ 2 拍は、Cdim7  のアルペジオ。ここのスケールは、D コンデミ。 3 ~ 4 拍の C ナチュラル、D ナチュラルは、D7 のコードトーン。 C# 音はパッシングトーンである。

11,  1 小節 1 ~ 2 拍の 4 音は、 3 拍表拍の G 音に向かうアプローチ音(ターゲッティング)。 3 ~ 4 拍は、はっきりしていないが、A ロクリアンだろう。 2 小節 1 ~ 2 拍は、 D フィリジアン。 3 ~ 4 拍は、 D コンデミ、又は D アルタード。 1 小節 3 拍~ 2 小節 2 拍まで、G ナチュラルマイナー( G エオリアン)と見ることが出来る。

12, 1 小節 1 ~ 2 拍は、 Cm7(4)ペンタの一部分。このペンタを含む 1 小節全体のスケールは、次の小節のコード F7 を考慮すると、 C ドリアン。3 拍裏の B ナチュラルは、グリスノート。 2 小節はすべて F コンデミ。 2 拍裏の E ナチュラルは、グリスノート。 2 小節 2 拍の Gb , E ナチュラル音は、次の F 音に向かうアプローチ音とみることが出来る(ターゲッティング)。(完2015/12/11)