ヘキサトニックで考える (2)
ここに提示するフレーズは、Dm7 と考えるよりもDドリアンと考えた方がよさそうである。Dドリアンモードと考えた場合でも、モードジャズは大きく二つに分けられる。マイルスがやっているモードとコルトレーンがやっているモードだ。コルトレーンがやっているモードといわれているものは、マイルスのモードと同じではない。マイルスが自分のモード曲の中で吹いている時、モード(スケール)以外の音を使うのは次の 3 つの場合のみである。クロマチックアプローチ(ターゲッティング)、グリスノート、ブルーノート。この3 つをスタンダードジャズで使っても誰もはずれたとは言わない。つまりマイルスは自分のモード曲の中でのアドリブソロにおいて、ほとんどインサイドで吹いているのだ。これに対し、コルトレーンのモード曲のアドリブソロには、システムとしてのアウトサイドが存在している。
トーナルセンターシステムのトーナルとは、トーン(音)のことで、これは音中心のシステムの意である。浮遊した音(主音以外の音)が、主音(中心音)に向かう(解決する)のである。これがトーナルセンターである。
このトーナルセンターシステムの主音(中心音)以外の音の選び方によって一つのモデル(型)ができる。モデルとはモードのことである。最初は2 ~ 3 音のモード。次に 5 音モード、 6 音モード。そして 7 音のチャーチモードになる。ブルースは 6 音、または 10 音モードである。マイルスのモード曲は、 7 音のチャーチモードをジャズに取り入れている。Dドリアンモードとは、主音(中心音)を D として、そこから全 半 全 全 全 半の音列モデルなのだ。
トーナルセンターとモードは、音楽の発生と同時に、共に一緒にシステム化されたと考えるべきである。トーナルセンターだけの音楽はありえない。12音にしろ、微分音にしろ、必ずモード化したスケールが伴うのである。トーナルセンターでピッチフリーの音楽もあるが、人間はでたらめには演奏できない。ある程度の長さを演奏すれば必ずあるモードに落ち着くのである。管楽器奏者のピッチフリーとは、普通の曲を+、- 2セントで吹ける能力のある人のピッチフリーである。同じピッチの音が吹くたびに違うのでは、システム化されない。それは、ただ幼いのである。
モードとはトーナルセンターを伴うものである。その意味で、マイルスのモードはモードそのものである。そしてコルトレーンのモードと呼ばれている音楽は、トーナルセンターの他に、スケール(モード)を中心とするシステムを付け加えている。それは、センターモード以外のモード(または以外の音)が、センターモードに向かう(解決する)システムである。例えば、センターモードがDドリアンのところで、Bドリアン → Bbドリアン → Dドリアン でフレージングする。センターモード以外の音がアウトサイドであり、センターモードの音がインサイドである。アウトサイドで浮遊して、インサイドで解決する音楽である。これをモーダルセンターシステムと呼ぶことにする。これは、トーナルセンターを含んだシステムである。
モーダルセンターではセンターモード以外の音が浮遊しているわけで、その浮遊感を楽しむ音楽である。ただしアウトサイドは、システムとして、ロジカルにアウトするのだ。でたらめにはずすのではない。しかし人間の脳はシステマチックにできており、何をやってもでたらめにはならないという説もある。
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Dドリアンモード以外の音は、アウトサイドと考える。
1段目1小節。 1~2 拍はAコンデミ、またはAハーモニックマイナーパーフェクト 5th ビロー(Dハーモニックマイナー)。3~ 4 拍は、Dマイナーペンタ+ 2 ヘキサトニック。この小節は 1 ~ 4 拍まで Dm7(Dドリアン)のはずであるが、 1 ~ 2 拍を A7, 3 ~4 拍を Dm7 とコード進行を創作してフレージングしている。 2 小節、 1 ~ 2 拍は、 Aコンデミ , 3 拍はクロマチックライン。 3 拍の 4 つ目の A音から 4 拍終わりまで FM7(9)のコード分散。 1 段目1 小節と同じで 1 ~2 拍は A7を想定している。
2 段目 1 小節。 1 ~ 2 拍はAコンデミ。 3 ~ 4拍は、 Dマイナーペンタ+ 2 ヘキサトニック。フレージングの考え方は 1 段目1 小節と同じ。 2 小節、1 拍は Aコンデミ。 2 ~ 4 拍は Dマイナーペンタ+b5 のブルースヘキサトニック。フレージングの基本的な考え方は、1 段目 1 小節~ 2 段目2小節まで同じである。
3 段目 1 小節。最初から 3 つ目までの 3 音(Ab, Gb, F )のモチーフの平行移動によるコンスタントファンクションに見えるが、3 回目のモチーフがDドリアンに着地していない。ここはひとつ飛ばして、 2 つ目から 4 つ目までの 3 音(Gb, F, Bb)のモチーフの平行移動によるコンスタントファンクションと見た方が良いだろう。 3 つ目のモチーフである Bb, A, D のBb 音はグリスノートと考えればDドリアンに着地する。3 拍 4 つ目のC 音から 4 拍終わりまで、Aマイナーペンタを想定していたが、結果的に 3 拍頭から Aマイナーペンタになっている。 2 小節、これもコンスタントファンクション。最初から3 つ目までの 3 音(E, G, A)のモチーフの平行移動によるコンスタントファンクション。 4 つ目のモチーフである A, C, D で Dドリアンに着地している。 3 ~ 4 拍は、 Aマイナーペンタとなっている。
4 段目 1 ,小節。 1 拍は、 Fマイナーペンタ+ 2 ヘキサトニックの断片。 2 ~ 4 拍は、 D マイナーペンタ+2 ヘキサトニック。 Fマイナーペンタ+ 2 は、 D マイナーペンタ+ 2 から見て、短 3 度上にずれている。短 3 度ずらしである。4 トニックシステムが頭の中にあってフレージングしている。2 小節 1 ~ 2 拍は、Bbm7 のコード分散。 3 ~ 4 拍は、 Dマイナーペンタ+ 6 ヘキサトニックだ。Bbm7 はDm7からみて長 3 度下にずれている。これは長3 度ずらしだ。 3 トニックシステムが頭の中にあってフレージングしている。
5 段目 1 小節。 1 ~ 2 拍Gナチュラル音まで、Aアルタードを想定してフレージングしたのだが、結果的にはAコンデミともいえるものになってしまった。2 拍最後のG#音は、パッシングトーン。3 ~ 4 拍はDマイナーペンタ+ 2 ヘキサトニックである。フレージングの考え方は 1 段目 1 小節と同じで、A7 – Dm7 を想定している。2 小節 1 ~ 2 拍 1 つ目A 音までAハーモニイクマイナーパーフェクト5thビロー(Dハーモニックマイナー)。 2 拍 2 つ目 C 音から 3 拍 1 つ目 A 音までクロマチックライン。同じ 3 拍1 つ目のA 音から 4 拍終わりまでDマイナーペンタ+ 2 ヘキサトニック。
B
1段目1小節。1 つ目~ 3 つ目までの3 音(F,Ab,Db,)は、Dbトライアド。4 つ目~6つ目までの3音(G,Bb,Eb,)はEbトライアド。 7 つ目~10個目までの4 音(E,C,G,E)はCトライアド。 4 拍は、Dmペンタ+6 ヘキサトニックだ。Dbトライアドは、Dm7 の半音下。Ebトライアドは、Dm7の半音上。これはマイナートライアドでもOKである。CトライアドからDマイナーペンタ+6 はDドリアンスケールでできている。2小節1拍の3音(E,C,G)は、Cトライアド。2拍1つ目~3つ目の3 音(Eb,Bb,G)は、Ebトライアド。次のG#音は、パッシングトーン。3~ 4 拍は、Dマイナーペンタ+2 ヘキサトニック。Cトライアドは、Dドリアンのスケール音。Ebトライアドは、Dm7の半音上のトライアド。
2段目1小節。1つ目~3 つ目の3音(F,Db,Ab)は、Dbトライアド。4つ目のG音から2拍4 つ目のF音までクロマチックライン。3~4 拍は、Dマイナーペンタであるが、2拍3つ目のE音から4拍 4 つ目のG音までと考えると、Dマイナーペンタ+2 ヘキサトニック。Dbトライアドは、Dm7の半音上のトライアド。2小節。1つ目~3 つ目の3音(D,Bb,Gb)は、D+トライアド。F#+トライアドでもあるし、Bb+トライアドでもある。Bb, Gb音は、Dドリアンの半音上の音である。4つ目の音Dから4拍のE音まで、Dマイナーペンタ+2 ヘキサトニック。
3段目 1 小節。2拍3つ目のF音まで、完全4度のフレーズ。2拍 4 つ目のC音から4拍2つ目のC音までクロマチックライン。2小節。1拍1 つ目のC音から2拍G音までクロマチックライン。次のBb音から4拍Ab音までEbマイナーペンタ。最後の2音は、Dドリアンのスケール音。Ebマイナーペンタは、Dマイナーペンタからみて、半音上のペンタ。半音ずらしだ。
半音ずらしもマルチトニックシステムと考えることができる。12トニックシステムである。12音は、12で割れる。マルチトニックシステムとは、12音を均等に分割し、それぞれの最低音をトニックとするシステムである。2トニック、 3 トニック、4トニック、6トニック、12トニックシステムがある。
4段目1小節。1拍は、Fマイナーペンタ。2拍は、クロマチックアプローチ。3 ~ 4 拍は、Dマイナーペンタ+b5 ブルースヘキサトニック。Fマイナーペンタは、Dマイナーペンタからみて、短 3 度上のペンタトニック。短 3 度ずらし(デミニッシュずらし)だ。4 トニックシステムである。2小節。1 拍は、Ebマイナーペンタ。2拍~4 拍はDマイナーペンタ+2 ヘキサトニック。Ebマイナーペンタは半音ずらしである。
5 段目1小節。1 拍C音から2 拍1つ目のA音までクロマチックライン。次の 2 つ目Bb音から3拍 4 つ目のBb音までEbマイナーペンタ。4拍はDマイナーペンタ。これも半音ずらしだ。2小節。1拍はAbマイナーペンタ。2拍はクロマチックライン。3~ 4 拍は、Dマイナーペンタ。Abマイナーペンタは、短3度ずらし(デミニッシュずらし)の4トニックシステムである。(完2016/07/30)