ヘキサトニックで考える (3)

ヘキサトニックで考える (3)

スタンダードジャズにおけるヘキサトニック

バークリー理論にあるアベイラブルノートスケールとは別の考え方で、アドリブフレージングしてみる。

ここでの基本的な考え方は、マイナーブルースヘキサトニック(マイナーペンタ+b5)に、譜面上のコードのコードトーン 1 音を加える方法である。ただし、その1 音はマイナーブルースヘキサトニックのスケール音でないことだ。

次に提示する譜面は、スターンダードジャズ ” Beautiful Love”  のテーマの前半部分とコード進行が同じものである。この  ” Beautiful Love”  は、Dマイナーブルースヘキサトニックだけでフルコーラスのアドリブも可能であるが、このDマイナーブルースヘキサトニックにコードトーンを 1 音加えることでコード感が強く出る。唄ものには、この方がしっくりくるのだ。

これを基本としてクロマチックライン、グリスノート、トライアド、アルペジオ、 2 音のインターバルライン、モチーフ、コンデミ、アルタード等は、どんなジャズにも使える。

この譜面は 2 小節づつ区切ってフレージングしている。16 小節全体を繋ぐようにフレージングしていない。この 1 6 小節を続けて演奏することはトレーニングとしては良いと思うが、音楽的にはスペースが少なく不自然なものになる。

バッキングコードは、普通のビバップコード(ビル・エヴァンス的な)でよい。モーダルなスタンダードにしたければ時々 3 度、 7 度をオミットする。時々アボイドノートをボイシングに使用する。 4 度のハーモニーを多めにする。トライトーンも時々避けることだ。

 

(スマホの方は譜面をタッチ、PCの方は譜面をクリックでクリアに拡大できます)

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1 段目前半 1 小節。 1 拍裏のE 音から 3 拍表の C 音までAm7 アルペジオ。スケール的には、 1 拍裏の E 音はEm7(b5) のコードトーン。 2 ~ 4 拍は、Dマイナーブルースヘキサトニック。この 2 つを合わせると、Dマイナーヘキサトニック+ 2  となる。 2 小節はすべて Dマイナーブルースヘキサトニック+ b6  でフレージングしている。 後半 1 小節。 1 拍表 A 音の前に半音下からのグリスノートがある。スケールは、 Dマイナーブルースヘキサトニックである。 2 小節。1 拍 3 つ目の Eb音はAb7(b9)のコードトーン。それ以外の音はDマイナーブルースヘキサトニックでフレージングしている。 2 つ合わせると Dマイナーブルースヘキサトニック+ b2  となる。

2 段目前半 1 小節。 1 拍のC、Cb 音は、 2 拍表の Bb音に向かうクロマチックアプローチノート。2 ~ 4 拍は、 Dマイナーブルースヘキサトニック。 Bb 音と合わせると D マイナーブルースヘキサトニック+b6。 2 小節。 2 拍表の Bb 音はC7 のコードトーン。それ以外はDマイナーブルースヘキサトニックでフレージング。 Bb 音を合わせると Dマイナーブルースヘキサトニック+b6。後半 1 小節。こいるこはスケールを変えてきている。コードは F でスケールは Fマイナーブルースヘキサトニック。 2 小節、コードは E7,A7だが、コードを無視して Dマイナーブルースヘキサトニックでフレージング。

3 段目前半 1 小節。1 拍最初のD 音の前にグリスノート。他はすべて Dマイナーブルースヘキサトニック。 2 小節、3 拍表のBb音はGm7のコードトーン。それ以外はDマイナーブルースヘキサトニック。この 2 つを合わせてDマイナーヘキサトニック+b6 を想定してフレージング。後半 1 小節、コードはBb7。ここはコードに沿ってGマイナーブルースヘキサトニックを使っている。 2 小節はDマイナーブルースヘキサトニックに戻っている。

4 段目前半 1 小節。コードはDm7でスケールはDマイナーブルースヘキサトニック。Dm7 はマイナーブルースヘキサトニック+ 1 音にはならない。 2 小節、1 拍裏のDb 音は、G7(b5) のコードトーン。他の音は、Dマイナーブルースヘキサトニック。Db 音と合わせて、D マイナーブルースヘキサトニック+M7を想定してフレージングしている。後半 1 小節。コードは Bb7 。2  拍の3 音は、Dbトライアド。このDbトライアドも含めて、 1 小節はすべて Bbコンデミでフレージング。Aナチュラル音はパッシングトーン。Bb7 のコードに沿ってフレージングしている。2 小節、コードはA7(b9)。 1 ~ 2 拍は、Cマイナートライアド。 3 ~4拍も同じだ。これは、 C アルタード、または C コンデミがスケール音として持っているトライアドだ。スタンダード曲等、機能和声で構成されている曲においては、時々7th コードでアルタード、コンデミを使用した方がそれらしくなる。よりコーダルに聞こえるのだ。

  b

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 “beautiful love” の最初の2 小節 Em7(b5) - A7(b9) のフレージングの可能性を深堀りしてみる。上の譜面は 2 小節で 1 区切りになっている。

1 段目前半 1 小節。コードは Em7(b5)。スケールは G マイナーブルースヘキサトニック。 2 小節。A7(b9)もGマイナーブルースヘキサトニックでフレージング。Ⅱm7 - ⅴ7  を Ⅱm7  一発でフレージングするマイナーコンバージョンだ。後半 1 小節。Em7(b5) のコードに対して、1 ~2 拍は、そのEm7(b5) のアルペジオ。マイナーブルースヘキサトニックはブルーススケールの 1 種で、このスケールが中心のフレーズではコード感が薄いものになる。このような状況の中では、このドンくさいコード進行上のコードと同じコード分散(アルペジオ)が、コード感を出すには良い方法で非常に新鮮で効果的である。 3 ~4 拍は半音階。 2 小節 A7(b9) は、 Dマイナーブルースヘキサトニック+b6  でフレージング。

2 段目前半 1 小節。 1 ~ 3 拍は、 Am7 のアルペジオ。このアルペジオは、 Aコンデミから派生するものだ。 1 小節 4 拍~ 2 小節 4 拍も Aコンデミのスケール音の内、 E と F# をオミットした 6 音の Aコンデミヘキサトニックで、フレージングしている。 G# 音はパッシングトーン。つまり 1 小節も 2 小節も Aコンデミでフレージングしている。Ⅱm7 - ⅴ7  を ⅴ7 一発と想定しているということだ。マイナーコンバージョンと逆の 7 th コンバージョンとでも呼ぶべきか。コード進行の創作とも言える。後半 1 小節。コードは Em7(b5) であるが、E アルタードのF 音をオミットした Eアルタードヘキサトニックでフレージング。  2 小節は、C 音をオミットした A アルタードヘキサトニック。

 3 段目前半。 1 小節、 2 小節共に、 G 音をオミットした 6 音の A アルタードヘキサトニックでフレージングしている。 2 小節 1 拍は、 A+ のトライアド。 3 ~ 4 拍はF トライアド。後半 1 小節は、Gb 音をオミットした Bb アルタードヘキサトニック。2 小節は Eb 音 をオミットした Aアルタードヘキサトニック。ここは Ⅱm7 -ⅴ7 をⅥb7 -ⅴ7  としてフレージングしている。コード進行の創作である。

 4 段目前半 1 小節、E 音があるので A アルタードではない。 A ハーモニックマイナーパーフェクト 5th ビロー(Dハーモニックマイナー)である。ここは、A7(b9) を想定している。 2 小節目は、 Dマイナーブルースヘキサトニック+M7 。 後半 1 小節。 1 ~ 2 拍の E, A, D 音はコンスタントファンクションのユニット。 3 ~ 4 拍の D, C, G 音もユニット。 1 小節最後の C 音と 2 小節 1 拍の Bb, F 音もユニット。 1 小節最後の C 音から 2 小節 3 拍まで、Dマイナーブルースヘキサトニック+b6 。 2 小節 2 拍の G# 音は、パッシングトーン。

 5 段目前半。 1 小節は、Dマイナーブルースヘキサトニックでフレージング。 2 小節 A7(b9) もDマイナーブルースヘキサトニックでフレージングするところを、短 3 度上の Fマイナーブルースヘキサトニックでフレージングしている。 短 3 度ずらし(ディミニッシュずらし)だ。後半 1 小節は、Em7(b5) をBb7 と想定して、G マイナーブルースヘキサトニック+b2 でフレージング。 2 小節 A7(b9) は、 Aアルタードを想定しそれを増 4 度上にずらし、 Eb アルタードでフレージングしている。ダブル短 3 度ずらしである。 1 小節をBb7 , 2 小節をEb7 と想定(創作)している。