メジャーとマイナーの混合 LAURA ハーモニックメジャー トーナルセンター(2)

「LAURA」のテーマの後半の、メロディとからめたハーモニーのアナライズをしていく。

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ここから 「LAURA」の後半の16小節だ。 

1段目、 2 段目は、前半の 1段目、 2段目とメロディもコードも全く同じものだ。

3段目、1 小節。譜面では省略されているが、1 拍 4 分休符、 2 拍 4 分 F音、 3 ~ 4 拍は、 2 分 G 音になっている。 3 ~ 4 小節も省略されているが、ここのメロディは、Cイオニアンのスケール音で出来ている。素直にこの 3 段目のコード進行を読めば、  1~2 小節の調性は、 Cマイナー、 3 ~ 4 小節の調性は、 Cメジャーとなる。

一見、前半Cマイナーで、後半 Cメジャーに転調したように見えるが、そうではない。そう考えてはいけない。

転調とは調を転ずることである。それでは転調の調とは何なのか?私は、調とは、主音(センタートーン)のことであると考えている。調を別の言葉に置き換えると、トーナル又は、トーナリティとなる。トーナルもトーナリティも明らかにトーン(楽音)という言葉から派生したものだ。それでは、調とはトーン(楽音)のことなのかというと、少し違っている。調は、ある一つの音(トーン)の意味ではなく、それはある一つの音(トーン)を中心とした音楽システムのことを指している。そして、それを一言でいうと、主音となる。主音という言葉には、その音を中心とした音楽システムという意味まで含まれる。”中心とした”というのは、その音で終止するということだ。つまり、調とは主音のことである。

ハ長調ではなく、ハ調と言った場合、Cを主音としCで終止する音楽、トーナルセンターCの音楽と言うことになる。ハ調(トーナルセンターC)は、主音であるCはもちろん使用するが、他は何のトーン(楽音)でも使えるのである。Cを主音としたスケールならばどんなスケールでも同時に複数使用可能ということだ。

調とは主音のことでありトーナルセンターシステムのことだ。トーナルセンターシステムは、ある一定の時期のオーネット・コールマン、ジョン・コルトレーン、マイルス・デイビス、チック・コリア、パット・メセニー、などで聞くことが出来る。

それでは、ハ長調とは何なのか?ハ長調のハとは、C音が主音だということである。ハ長調の長とは、主音であるCから見て、長2 度、長3度、完全4度、完全5 度、長6度、長7度の音を持っている音列であることを示している。2 ,3 , 6 ,7 度が長なので、長調(メジャースケール)と呼ばれている。この部分はモード(スケール)を指定するところで、その音楽システムで使える音(楽音)を制限している。調である主音システム(トーナルセンターシステム)で使える音の制限をしている。つまり、ハ長調とは、Cメジャースケールのスケール音を使って構築されたトーナルセンターCの音楽である(当然、半音階、グリスノートは使える)。そしてCメジャースケールには、Cが主音という意味も含まれていて、主音にはその音で終止する音楽システムという意味も含まれているので、結局、ハ長調とはCメジャースケールのこととなる。

要約するとハ長調の ” ハ” ここは主音の指定、” 長 “ここはモードの指定、” 調 ” これはトーナルセンターシステム音楽であることを示している。

転調とは調を転ずる事。調が主音(システム)のことであれば、主音の移動が転調ということになり、譜面3段目の前半Cマイナー、後半Cメジャーは転調ではなくマイナーとメジャーの混合(モードの変換、モーダルインターチェンジ)ということになる。ということは、主音が同じメジャーとマイナーは、一つの調ということになる。メジャー、マイナーに限らず、どのような音列でも、主音が同じならば一つの調となる。調中心(トーナルセンター)の調とは、このことである。

バークリー理論では、主音が同じでスケール(モード)が変化する状態をモーダルインターチェンジと呼んでいて、転調と区別している。機能的和声音楽においては、主音が同じであるメジャーとマイナーの交換を指すことが多いが、モーダルインターチェンジという名前からもわかるとおり、基本的にはモードの変換である。(主音は同じ)

このモーダルインターチェンジは、トーナルセンターシステムの名残である。バークリー理論が元々クラシックの理論であることを考えると、現代の機能的和声音楽も古くはトーナルセンターシステムでそれを土台に変化してきたことを伺わせる。

モードジャズのアドリブソロにおいて、指定されたモードではなく他のモードを使って、アウトする方法がある。チック・コリア、ハービー・ハンコック、ジョン・コルトレーン、マッコイ・タイナー、等のモードジャズでよく見られるものだ。これも、転調とは言わない。曲によって指定されたモードは、動いていないからだ。このタイプのアドリブソロにおいてはおおまかに 6 つの状況が想定できる。一つは、ソロプレーヤー、ピアノ、ベースの三者共に別々のモードにアウトした場合。これは、トーナルセンターシステム音楽におけるドミナント度が強い状態と同じだ。2つ目は、三者の内、二者が同時にアウトした場合。ソロプレーヤーとピアノのバッキングが、別々のモードにアウトすることは結構ある。そしてソロプレーヤーとベースがアウトすることもありえる。3つ目は、三者の内、二者が同じモードで同時にアウトする場合。これはピアノのアドリブソロでは意識的に右手、左手同じモードでアウトできる。4つ目は、三者の内、一者だけがアウトする場合。この状況も多いはずだ。ソロプレーヤーがアウトとは限らない。5つ目は、三者共にアウトしない場合。そして6つ目は、三者共に同じモードへ同時にアウトした場合である。この場合、曲で指定された主音とアウトしたモードの主音が異なる時は、結果として転調と同じことになるが、これは転調とは言わない。コードジャズにおいて、ソロプレーヤー、ピアノ、ベースの三者がC7のところをAbm7で演奏しても転調と言わないのと同じだ。曲で指定されたモードが変化した訳ではないからだ。そして、何よりもその時の演奏者の意識がアウトであることだ。5 つ目の三者共にアウトしない場合は、マイルス・デイビスの”マイルストーン”と同じシステムになる。特にマイルスは、この曲で指定されたモードのスケール音のみで見事にアドリブソロを展開している(半音階、グリスノートは使用している)。アウトしていないのだ。このマイルスのモードジャズと、60年代前半のコルトレーンのモードジャズは別物と言わざるを得ない。

マイルス・デイビスのアウトしないモードジャズを普通にモードジャズと呼ぶとすれば、アドリブソロにおいて頻繁にアウトするコルトレーンのモードジャズを”モーダルセンターシステム”と私は呼んでいる。センターモードを持っていて、そのモードで終止する音楽システムである。そしてモードは、当然主音を持っているので主音でも終止する。トーナルセンターシステムの変形である。

譜面に戻る。この 3段目の調性は、大きいスパンで見るとCメジャーにCマイナーのコードが混ざってきたと考えるのが妥当だろう。トーナルセンターの名残である。 2 小節 2 拍のメロディが、Eナチュラル音となっているが、弱拍でもあり次のF 音に向かうグリスノートと見れば、 3 段目 1 ~ 2 小節は、Cハーモニックマイナーと考えることができ、調性は Cマイナーとなる。ただし、Cハーモニックマイナーは、Cイオニアン(Cメジャー)のスケール音であるBナチュラル音を持っているので、Cエオリアン(Cナチュラルマイナー)に較べて少々メジャー感のあるマイナーである。この 2 小節 2 拍のEナチュラル音をグリスノートでなくスケール音であると考えると、 2 小節のスケールは、Cハーモニックメジャーとなり、マイナー感よりメジャー感の方が強くなる。この場合、 1 小節目は、コードが Eb音を持っているので、Cエオリアン(Cナチュラルマイナー)、又はCハーモニックマイナーである。Cハーモニックメジャーにはならない。

1小節Cエオリアン(完全マイナー)、 3 小節Cイオニアン(完全メジャー)の間に2小節Cハーモニックメジャー(メジャーとマイナーの混合)を挟むことによって滑らかにマイナーからメジャーに移行している。

それでは、3段目 1小節のメロディを絡めたスケール(ハーモニー)を考えてみる。  1~4拍まで、 Cエオリアン(Cナチュラルマイナー)、Cハーモニックマイナーが想定できる。続いて 2 小節 1 ~ 2 拍のDm7(b5)、メロディはG音と Eナチュラル音。ここは、Dロクリアン#2(Fメロディックマイナー=Eアルタード=Cナチュラルメジャー)とCハーモニックメジャーになる。 3 ~ 4 拍、G7(b9)、メロディはF ,Ab ,Bナチュラル音。ここは、Gコンデミ、Gアルタード、Cハーモニックメジャーが想定できる。メジャーとマイナーの混合で見れば、Gアルタード、Gコンデミ、Cハーモニックメジャーの順でマイナー度が高い。 3 小節1 ~ 4 拍は、 Cイオニアン(Cメジャー)。 4 小節1~ 4 拍は、コードがD7,メロディがD ,B ,C音なのでCリディアン(Dミクソリディアン)、又は、Cコンデミが可能だ。

4段目。ここも全体の調性は Cメジャーである。1小節 1~ 4 拍、コードは D7(b9)、メロディは Eb音。スケールはまず、Gハーモニックメジャー。その他、Gハーモニックマイナー、Dアルタード、Dコンデミ。この他、Gナチュラルメジャー(前半メジャー、後半ナチュラルマイナー)は、F#音を持っていないが、D7(b9)で使えない訳ではない。ここはすべてCメジャーから見て、メジャーとマイナーが混合しているスケールであるが、マイナー度の高いスケールから順にまずは、Dアルタード、次にDコンデミとGハーモニックマイナー、そしてGハーモニックメジャーになる。

2小節。三つの見方がある。 2 拍表拍の Eナチュラル音を次の Eb へ向かうグリスノートと考え、 2 小節全体をGメロディックマイナーパーフェクト5thビロー(Cメロディックマイナー)と考える。これが一つ目。二つ目は、1拍の4分Eb音を前小節( 1小節)からのメロディのエキスパンド(拡張)と考え、 2 小節 1拍目を D7(b9)で考える。ただし、 2小節 1拍目で実際に鳴っているコードは、G7である。実際に鳴っているハーモニーが G7でも、メロディの奏者は、D7(b9)でのメロディが拡張したという認識である。このメロディのエキスパンドはアドリブソロではよくあることで、 2 ~ 3 拍平気でずれこむ時もある。メロディ上、 2 小節 1拍目をD7(b9)と考えると、G7は 2 拍目からだ。そう考えると、ここ(2 小節)は、Gミクソリディアンとなり、 2 拍裏の Eb音は、パッシングトーンとなる。三つ目。Eb音は、調性であるCメジャーから見てブルーノートと考える。すると 2 小節は、Gミクソリディアン+key C のブルーノート(Eb音)となる。

ブルーノートにしろ、クロマチックラインにしろ、グリスノートにしろメロディのエキスパンドにしろEb音は、keyC から見た場合、しっかり、マイナーの音である。ブルースも、クロマチックもグリスノートもメロディのエキスパンドも、結局はメジャーとマイナーの混合ということになる。そして、それらはトーナルセンターの名残である。特にブルースは、トーナルセンターそのものと言っていい。(2016/02/23)