” 雪の華 ” を中島美嘉はどう唄っているのか・・・(改)

” 雪の華 ” を中島美嘉はどう唄っているのか・・・

ポップスの唄い方 (アナライズ)

CD アルバム ” BEST “の 9 曲目に ” 雪の華 “がある。中島美嘉、20 才の録音である。中島美嘉がこの唄をどのように唄いこなしているのか、アナライズしていく。( )の中に歌詞を書き、その一個一個の歌詞が実際にどう唄われているのか、感じた通りに書いていく事にする。

(のびた かげを ほどうに ならべ)

最初の ” のび “のピッチは高い。 ” び “ で軽くベンディングアップしている。” のびた “ は、繋がって聞こえる。ピッチについては、CD なので、当然ピッチ補正されているはずである。しかし、ピッチ補正は、普通はある幅を残して、その幅の中にピッチを寄せる程度にかける。厳密にきっちりやると、ビブラートもベンディング(しゃくり、フォール、ターン)もまっすぐになってしまう。微妙な揺れも直線になり、ロボットボイスになってしまうのだ。つまり、ピッチ補正をかけても、ボーカルのピッチが悪ければ、少しははずれる。 10 セント以内の話である。 ” かげ “” か “は、ピッチが低い。       ” げ “  はベンディング。 ” を “ は 、ビブラートがかけられている。 ” ほどうに ” の、  ” う “ は、 ” に “ に向かってベンディングされている。 ” なーらべ “” なーら “ は、ベンディングされて ” べ “ に繋がっている。 ” べ “ は、わずかにビブラート。

(ゆうやみの なかを キミと あるいてる)                                  

” ゆう “ は、少し高い。 ” やみ “” や “は、低めで、ベンディングして ” み “ に繋いでいる。   ” なかを “” なか “は、少し低めで、 ” か “ でベンディング。 ” を “ は、ビブラート。 ” キミ “ は、高めで、少し短めに切って発音されている。その後の ” と “ は、ベンディング。 ” あるいてる “” る “ は、ベンディング。 ” て “ は、わずかにビブラート。 ” る “ は、普通にビブラート。

(てを つないで いつまでも ずっと)

” を “ でベンディング。 ” つない “ は、低めで、 ” な “ でベンディングされいる。 続く  ” で “ で、ビブラートをかけながら、わずかにベンディング。 ” いつ “ は、短めに発音されている。 ” ま “ は、少し低めで、わずかにベンディングされている。これは、わかりにくい。 ” ずっと “” ず “ は、高く、ベンディング。 ” と “ は、ビブラートがかかっている。

(そばに いれたなら なけちゃうくらい)

” そばに “” そば “ は、短めに発音。 ” に “ でベンディングされている。 ” いれたなら “ の   ” い “ は、高めである。 ” れ “ でベンディング。 ” たなら “ は、” な “ でベンディング。 ” ら “でもベンディングしながらビブラートをかけている。 ” なけちゃう “” なけ “ は、少し短めに、 ” ちゃう “ は、わずかに高めで、ベンディングされている。 ” くらい “” ら “ は、ビブラートで、わずかにベンディング。 ” い “ で、ビブラートだ。

イントロの後半の、ピアノとストリングス。ピアノは、少しタメて弾いている。特徴的なのは、 8 分の表拍を弱く、裏拍を強く弾いて、フレーズに、うねりと前進感を生み出している。唄が入ると、ピアノが 1 小節を 4 つ刻むが、イントロのメロディの時よりも、少し後にタメている。しかし、唄は、イントロのピアノのメロディの乗りと、ほぼ同じタイミングで、唄っている。ピアノの、バッキングよりも前に唄っているのだ。これは、ボーカルのリズム感が良いのか、それとも、レコーディングエンジニアの腕が良いのか、どちらかだ。唄は、もちろんタメて唄っている。ピアノのキザミは、唄よりも少し後だ。唄は、語りかけるように唄っている。隣の人に語りかける様に・・・。唄に  ” 何か “  が乗っているかというと、そうでもない。

(かぜが つめたく なって)

” かぜが “” か “ は、高い。 ” が “ は、軽くベンディングした後、 ビブラートがかかっている。 か “ と ” が “ に、少しアクセントがついている。本人にアクセントをつけている意識はないだろう。自然に、日本人のアクセントが出ているということだ。洋楽ではないので、 OK である。  ” つめたく  ”  の全部に、一個づつベンディングがされている。 ” つめ “ は、低い。 ” つ “ ” く “ に、軽くアクセント。 ” なって “ ” な “は、ベンディング。その後、 ” あ “ が、あって、ベンディング。 ” て ” で、ビブラートをかけている。 ” つめた “ は、わずかに短めだ。

(ふゆの においがした)

” ふゆ “ は、少し短めに切っていて、少し低めだ。 ” の “ は、軽くベンディングしている。 ” におい “” に “ は、高い。続く ” お “ は、高く、ビブラートをかけながらベンディングして、 ” い “ の直前で、きっている。 ” い “ も高い。 ” にお “ に、アクセントがついている。 ” した “” し “ で、わずかにビブラートをかけながら、わずかにベンディング。これは、わかりにくい。 ” た “ の後半、少しビブラート。 ” し “” た “ も、高めだ。 ” し “ に、少しアクセントがついている。

ベンディングもビブラートも、ピッチとその時間的変化のコントロールによって創り出される。ベンディングアップも、ただ、ピッチを高くするのではなく、いつ上げ始めて、どのくらい時間をかけてどこまで高くするのか。ピッチの変化も直線的ではない。ビブラートも、ビブラートの中心線は、基本的に真っ直ぐでなければならない。ベンディング・ビブラートは、それが出来てからのものである。つまり、ピッチコントロールの良いボーカルでなければ、自分のイメージ通りのベンディング(しゃくり・フォール・ターン)、ビブラートはできないのだ。ピッチに、シビアな耳を持っていなければ、わずかなベンディング、かすかな(浅い)ビブラートとは、認知できない。しかし、このわずかなベンディング、かすかなビブラートで、唄の雰囲気は、大きく変わるのである。

アクセントの場所によっても、雰囲気は大きく変わる。この ” 雪の華 “の場合、かなり、日本寄りの Jポップスになっている。少し歌謡曲の雰囲気を持っている。多くの J ポップスが、このようになっているが、悪いことではない。洋楽と歌謡曲の混合の割合の問題である。日本っぽさが多く出ても、バタくささが多く出ても、好みの問題で、大事なのは、次の時代にどれが生き残るのかである。生き残ったものが、次の時代の  J ポップスになるのである。音楽の質が、高いという意味ではない。

(そろそろ このまちに)

最初の ” そろ “ は、高めで、  ” そ”  は、ベンディング。二回目の ” そろ “ は、低めだ。 ” そ “ に、かすかなビブラートをかけながら、わずかなベンディング。 ” この “ は、低い。 ” こ “ に、かすかなビブラート、そしてベンディング。 ” ま “ が、低く、” ち “ は、高い。 ” に “ で、ビブラートをかけながら、小さくなっている。そして低めだ。アクセントは、二回目の ” そ ” 、 ” こ 、ま 、に “ だ。

(キミと ちかづける きせつが くる)

” キミ “ は、低くなっている。 ” ミ “ は、ビブラートをかけながらのベンディング。” づける “” づ “ は、高い。そしてわずかにベンディングで、かすかなビブラート。これも、わかりにくい。” ” は、ビブラートだが、ビブラートの中心が、不安定に動いている。綺麗なビブラートではない。 ” きせつ “ の、 ” つ “ は、低い。そして、少しベンディング。つづく ” く “ は、低い。 ” る “ で、ビブラート。アクセントは、 ” ミ、ち、づ、き、つ、くる “ だ。

ここでの、ピッチの高い低いは、ほんのわずかなもので、2 ~ 3 セントのズレである。音楽上は全然問題にならないレベルのものである。ちなみに、半音のピッチ幅が、50 セントである。

B メロ というか、次から、唄のタイミングが、少し前に出て、それをキープしている。ピアノのバッキングのタイミングに、変化はない。テンポは、 72 である。ピアノは、クリックを聞きながら、演奏している。ボーカルだけが、タイミングを少し前に出している。これも、ボーカルのリズムセンスが良いのか、エンジニアの編集の腕が良いのか、わからないが、結果は良くなっている。

この部分のピッチについては、 ” 雪の華 “ から、 ” キミを愛してる “ までの、ほとんどを、わずかに高めに唄っている。「高い音は高めに」を、意識して唄っているにしても、ピッチのコントロールが良すぎる。ここは、全体にかけるピッチ補正ではなく、一音一音、個別にピッチ補正をしていると思われる。そして、「高い音は高めに」を、微妙にコントロールしている。高めにすることによって、緊張感が増すのだ。ほんの 2 ~ 3 セントのことだ。

この唄のコンセプトとして、B メロ は、唄のタイミングを前に出し、高い音のピッチをわずかに高めにして、緊張感を創り上げている。ピッチ補正を承知の上で、数セントのピッチの高い、低いをやってきた意味がここにあるのだ。

そして、この B メロ からにわかに、唄に ” 何か ” が深く乗ってくるのだ。ミーシャの ” エブリシング “ と、同じものである(ミーシャの唄で、” 何か “  が乗っているのは、 ” エブリシング ” 1曲のみ)。クラシックの声楽で言えば、SLAVA と同じものが乗っている。SLAVA の方が濃く乗っているが・・・。そして、SLAVA は、唄の最初から ” 何か ” を乗せて来る。この ” 雪の華 ” の A メロ も、B メロ やサビのように、キャッチーなメロディでは無い分、特に、その一音一音に、 ” 何か ” を乗せるべきである。 A メロ は、正直、かなりうすい。

尚、B メロ とサビは、かなり遠くへ声を飛ばす発声法に、切り替えている。伸びのある、いい声である。

音に何かを乗せる・・・美しい音とは

ピッチ

演奏が上手になるにはどうすればいいか

音の先端(アタック)を合わせれば、2つの音が同時に聞こえるかという問題