英語と日本語のタイミングの違い(改)

英語と日本語のタイミングの違い


 英語のラジオ放送 「AFN」を聞いていると、アナウンサーの声は明るくて緊張感があり、前進感があり、時には攻撃的でさえある。
 それに比べて NHK のアナウンサーの声は、個人差のあるものの、ゆったりと穏やかで静止感があり、けっして攻撃的ではない。試しに「AFN」のアナウンサーに合わせて声を出して英語を話してみるとよい。「AFN」のアナウンサーの話す英語の発音のタイミングが、かなり早く感じるのではないだろうか。これは母国語を英語とする人々がパルス (間隔が均等な点) に対していつも早めに発音 (アタック) していると考えるよりも、その状態が普通なんだと、言いかえると其の状態でパルスと同時に感じていると考えた方がよいだろう。
あらゆる民族の音楽において、その始まりは 「唄」と 「打楽器」 からと仮定すると、「言葉」(唄)のタイミングとイントネーションがその民族の音楽を支配すると考える。
 つまり、英語の音楽の場合は、英語(唄)のタイミングがリズムのタイミングを決めているということだ。ヨーロッパ古典音楽(クラシック)もドイツ音楽はドイツ語の、フランス音楽はフランス語の、イタリア音楽はイタリア語のそれぞれの母国語の言葉(唄)のタイミングとイントネーションがリズムを決めている。ドイツ語、フランス語、イタリア語のそれぞれのタイミングが微妙に違うことは考えられるが、基本的に英語も含めて同じと考えている。

佐渡  裕ベルリンフィルを指揮している DVDが、NHK から出版されている。佐渡  裕の指揮に合わせて手を振ってみてみると、指揮のタイミングがかなり早く、びっくりすることだろう。(タイミングの違いをぜひ体験してみよう。)
 少々、大雑把にいうと JAZZ ,ロック、クラシック、ラテン、ブラジル、日本のポップスは、なまりはあっても基本的にタイミングが同じと考えている。
 発音してから少し後に音のリズム上の中心 ( リズムの点)がある音楽である。
日本のポップスに関しては、日本語で唄ってはいるが、ロック 又は ファンクのリズムに日本語の歌詞を乗せたという コンセプトで演奏者は演奏しているはずだ。日本語だが、英語のタイミングで唄っている。(個人差はある)
 ピアノ 1台のみでの演奏 (楽器単体のみでのソロ演奏)においてはタイミングは自由でいいんじゃないかと考えがちだが、これは英語におけるタイミングと同じに考えるべきだ。言葉を発することと、楽器単体のみでのソロ演奏とは、シチュエーションが同じである。楽器単体のみでの演奏も、 クリックが頭の中にあって、それよりもアタックを少し(かなりとも言える)前に弾かなければならないのだ。

これは基準のタイミングのことを言っている。よい演奏家は、そのように演奏しているからである。 この時、車を飛ばしているような疾走感が感じられる。もちろん実際の演奏はこの基準のタイミングのみで演奏される訳ではなく、様々なタイミングの音が混ざっている状態だ。特にテンポの遅い曲ではこれが顕著になっている。そして全体的にタイミングを少し遅らせて演奏されることが多いのである。テンポが 60~80 位の曲では、疾走感ではなくゆったり感が欲しいからだと思うが、タメて演奏されることが多い。テンポが 200 以上の曲では、タメて演奏されることはほとんどないと思う。私はこの 200 以上のテンポでタメていない演奏のタイミングを 「基準のタイミング」 と考えている。なぜなら、テンポ 60 の曲でも、音価の短い音( 1拍 6連とか 1拍 8連とか)が連続するフレーズのタイミングは、テンポ 200 以上のタイミングと同じだからだ。テンポ 240の曲の 4分音符は、テンポ 60の 16分音符と実際上、音の長さが同じになる。音の長さが短くなると、私の考える基準のタイミング(タメて演奏しない)に近づく。

どのテンポの曲でも、一番前のタイミング(基準のタイミング)は同じである。テンポ 60 位の曲で一番前のタイミングが無い場合があるが、それは短い音のフレーズがなく、全体もゆったりと表現したかったからだろう。タイミングの基準を、短い音の連続のタイミング(疾走感)にして、それより遅れるに従ってゆったり感が増すということである。

実際の演奏では、頭の中にゆったりとしたフレーズが出てきて、それと同じ色の「ゆったり感」でそのフレーズを演奏するだけである。基準のタイミングをマスターした人が、頭に浮かんだフレーズのタイミングで演奏することがベストである。基準のタイミングが遅れている人の場合、少し「ゆったり感」のつもりが ゆったりしすぎてしまうのである。元々の基準がずれているので、予想以上にゆったりとしてしまうことになる。

ポップスの ラルク ・アンシェルの場合、ベースは、私の言う 「タイミングの基準」で演奏している。アタック(発音の先端)をタイミングの基準点に感じて演奏している人に比べて、テンポによっては半拍位前に弾いている。ラルクのボーカルのタイミングはよいと思うが、ドラムと ギターは少し遅れて演奏している。

X JAPANの場合、ドラムは私のいう「基準のタイミング」で叩いている。ラルクのベースと同じタイミングである。 X JAPANの他のメンバーもタイミングは悪くはない。

「基準のタイミング」をつかむには、CDを再生して一緒に弾くとよいだろう。ドラムなら X JAPAN、ベースはラルクの CDを再生して一緒に弾いてみるのがよいだろう。
 
 クラシックの場合、恐らくほとんどの人(日本人)が,それ(CDと一緒に弾くこと)をしていない為に、遅れている演奏家が多いのだと思う。それを改善するには、例えば、ブーニンのCD と一緒にショパンを弾いてみることが大事である。それを録音して、客観的に聞き返しタイミングを確認してほしい。特に弦楽器のボウイングは大きく遅れることが多い。弦楽器は今の N響も怪しいと思っている。20年前の N響と違って、今はどの楽器もかなりタイミングを前に演奏している。タイミングが良い時も有るが、指揮者によるのか変な時もある。特に弦楽器は必死にタイミングを前に出しているのがよくわかる。

楽器とメトロノームの音を両方とも鳴らし、メトロノームの音の消える所が「基準のタイミング」ではない。

日本語のタイミングについては、先日ラジオでたまたま東京弁(江戸弁)を耳にしたのだが、言葉のタイミングが今の NHK のアナウンサーよりもかなり前だということに気がついた。最近の NHK の若手のアナウンサーの中には英語と同じタイミングで喋る人もいる。小宮悦子、古舘伊知郎もタイミングは遅れていない。また、津軽三味線、阿波踊り、能の鼓のタイミングはヨーロッパの音楽とほぼ同じなので、タイミングの問題はそう簡単ではない。2014/04

 

HKT 森保 まどかのピアノ演奏(異邦人)について・・・